満員電車に揺られ、時間に追われ多忙な日々を送るなかで、「定年後は都会を離れ、地方でゆったり暮らしたい」と定年後の移住プランを思い描く人もいるでしょう。ただし、地方移住には“認識しておかなければいけない注意点”があります。これを軽視すると、実際に移住したあと「こんなはずではなかった」と後悔するケースも少なくありません。東京から福岡に移住した60代男性の事例を通して、地方移住の理想と現実をみていきましょう。
“理想そのもの”だったのに…定年後「東京」から「福岡」に移住した退職金2,500万円の60代元公務員、わずか3年で“Uターン”したワケ【地方移住失敗記】
シゲルさんが「東京へのUターン」を決めたワケ
そして追い打ちをかけたのが、近隣住民との人間関係です。
移住してすぐは家にいないことも多く、地区で行われている草むしりなどのイベントに参加できずにいたシゲルさんは、ご近所さんとの距離を縮める機会を逃し、気づけばすれ違っても声をかけられない関係に。
さらに、都内の友人たちに移住を報告した際は「羨ましい」「遊びに行くよ」と言われ、移住先での友人との交流を楽しみにしていたシゲルさんでしたが、実際に会いに来たのは移住直後の1人だけ。その後は友人にも会えず、近隣住民とも馴染めず、孤独な日々を強いられました。
そして移住から約3年後。予想外の孤独と不便さに耐えきれなくなり、シゲルさんは東京へUターンすることを決めたのでした。
家が売れない…八方塞がりの現実
「とにかく家を売って東京に戻ろう」と考えたシゲルさんでしたが、現実はそううまくいきません。
自宅の買い手がなかなか見つからず、最終的には購入額の半値以下で手放すことに。現在は家賃7万円の1K暮らしです。
「移住に固執しすぎて冷静さを失っていた」「周りに知り合いがいないのがこんなに孤独だとは思わなかった」「こんなことなら再雇用で65歳まで働けばよかった」
シゲルさんは次々と後悔の言葉をこぼしていました。
地方移住の理想と現実
認定NPO法人ふるさと回帰支援センターによると、2024年の移住相談件数は61,720件と、4年続けて過去最高となるなど、地方移住への関心は年々高まっているようです。しかし実際には、理想とのズレが生じることも少なくありません。
そのギャップを埋めるためには、最低でも下記の点を確認・認識しておく必要があります。
1.人との距離感
都市部では不必要に干渉しないことが心地よくても、地方では地域行事や共同作業が生活の一部になっている場所も多く、参加しないと孤立してしまうケースもあるようです。
2.利便性
地方都市では車移動が前提となる地域も多く、高齢になるほど行動範囲が狭まります。元気なうちは問題なくても「10年後、20年後も同じ生活が続けられるか」という視点が欠かせません。
3.資金計画
退職金などのまとまったお金が手に入り貯蓄が十分にあるように思えても、住宅購入や旅行、交際費、日々の生活費が重なると、資産は想像以上のスピードで減っていきます。特に不動産は、売りたいときにすぐ売れるとは限らず、「出口戦略」を考えない移住は大きなリスクです。
地方移住そのものが悪いわけではありませんが、「準備不足」のまま踏み出してしまうと、後悔してしまう可能性が高くなります。