(※写真はイメージです/PIXTA)

クリニック経営において、診療スキル以上に重要なのがスタッフ間の人間関係です。ここでは、医師・看護師・受付スタッフなど立場を超えて「円満な組織」をつくる注意点と、実践的かつ具体的な方法を見ていきます。本連載は、コスモス薬品Webサイトからの転載記事です。

診療の質は「人間関係」で決まる

「受付と看護師の間に、ギスギスした雰囲気があるようだ…」

「業務指示を出すたびに空気が重くなる気がする…」

 

クリニックを開業してしばらく経つと、こんな悩みが出てくることがあります。

 

いずれも医師としての診療スキルとは別の問題であり、「職場の人間関係」に起因しているといえます。クリニックは少人数の組織です。スタッフ間の関係性が、そのままクリニック全体の雰囲気や患者対応に影響を及ぼします。言い換えれば、「よいチーム」がよいクリニックをつくるといえます。

 

では、円満な組織を実現しているクリニックは何をしているのでしょうか?

「役割」ではなく「目的」を共有する

円満な職場をつくる第一歩は、「同じ方向を向くこと」。医師・看護師・受付と役割は違っても、「患者様に安心してもらうこと」や「ミスを防いで安全な診療を提供すること」といった“目的”は共通しているはずです。

 

実際にうまくいっているクリニックでは、定期的に「振り返りミーティング」を実施しています。たとえば月に1度、診療の終わった夕方に30分だけ時間をとり、

 

●今月うまくいったこと

●こうすればもっとよくなると感じたこと

●患者様からの声

 

などをスタッフ全員で共有します。医師の立場から「受付さんが丁寧に対応してくれたおかげで助かった」など感謝を伝えることが、自然と良好な関係を築くきっかけになります。

「言いたいことを言える場」がトラブルを防ぐ

クリニックの人間関係が悪化するいちばんの原因は「誤解」と「不満の蓄積」です。

 

たとえば、ある看護師が「この医師は全然話を聞いてくれない」と思っていたが、医師の側は「忙しいから遠慮してくれているのかと思っていた」ということはよくあります。

 

そうした行き違いを防ぐには、「言いたいことを言える場」が必要です。

 

小規模なクリニックでは、スタッフ同士が常に顔を合わせているようで、意外と横の情報共有が弱いことがあります。とくにパート勤務やシフト勤務が交錯する職場では、些細な行き違いが誤解を生みがちです。

 

そこで有効なのが、「スタッフ連絡ノート」や「業務引き継ぎノート」の活用です。ノートには、気づき・連絡事項・困っていることなどを自由に記入できるようにしておき、次の出勤者が確認するスタイルです。

 

医師やリーダーが時折コメントを入れることで、単なる連絡帳ではなく「関心を持ち合う媒体」としても機能します。

医師の「ひと言」が組織の空気を左右する

スタッフ同士の関係ももちろん大切ですが、実は組織の雰囲気を決定づけているのは「院長のふるまい」です。たったひと言の言い方、指示のタイミング、患者様への姿勢など、スタッフは常に見ています。

 

とくに開業直後の時期は、業務の立ち上げや人員配置の調整で医師も多忙を極めます。そのなかで無意識に出た「イライラ」がスタッフに伝わり、職場全体がピリつく…ということも少なくありません。

 

円満なクリニックでは、院長が「ありがとう」と「おつかれさま」という言葉をよく使います。忙しいときほど意識的に「感謝」「ねぎらい」の言葉をかけることで、チームの結束が高まります。

 

また、医師の態度は患者様への姿勢にも現れます。「患者様への声かけが丁寧な先生の下では、自分も自然と丁寧な対応を心がけるようになった」というスタッフの声は少なくありません。リーダーとしての背中が、無言のメッセージとして組織全体に伝わるのです。

勤務条件が「公平」であることも重要

人間関係は感情だけでなく、「待遇の公平さ」にも左右されます。

 

●Aさんだけ定時に帰れる

●Bさんはずっと忙しい場所に配置されている

●昇給や賞与の基準があいまい

 

こういった“モヤモヤ”は、人間関係を悪化させる火種になります。シフトや昇給のルールなど、「目に見える公平さ」を整えることも円満な職場づくりには欠かせません。

 

お勧めは、「院長が1人で決めない」ことです。昇給や配置換えについても、評価基準を一緒に考え、定量・定性の両面から判断できる仕組みをつくると、納得感が格段に上がります。

「ちょっとしたイベント」が人間関係を和らげる

円満なクリニックでは、「仕事以外の時間」の活用も上手です。たとえば、誕生日のスタッフにささやかなプレゼントを渡す、年に1度のランチ会を開催する、月に1回「おやつタイム」を設けるなど、日常にちょっとした“非日常”を加える工夫をしています。

 

これらはすべて「強制しない」「軽やかに楽しむ」ことがポイントです。こうした小さな取り組みが、「この職場で働くことが心地よい」と感じる空気を育てるきっかけになります。

人間関係は「仕組み」で育てる!

患者様から選ばれるクリニックとは、診療スキルだけでなく「人の雰囲気」がよいところです。実際、口コミや紹介の多いクリニックは、スタッフが笑顔で連携しているケースが大半です。

 

「人間関係は自然にできるもの」と思われがちですが、実は「仕組み」で育てることができます。定期的なミーティング、感謝を伝える習慣、第三者のサポート、待遇の公平さ。さらに、ちょっとしたイベントや心配りも加えることで、小さな職場でも“大人のチーム”が育っていくのです。

 

円満な組織づくりは、医療の質を底上げする土台。開業を控えている方、すでに開業したばかりの方も、ぜひ「人」に焦点を当てたクリニック運営を意識してみてください。信頼し合える仲間とともに、よりよい医療を届けていきましょう。

 

 

山本 達矢

社会保険労務士法人WILL
代表社労士
特定社会保険労務士