(※写真はイメージです/PIXTA)

※本連載は、株式会社ベルテックス『会社員のための不動産投資マガジン』から転載したものです。

税務上の「必要経費」の基本

不動産投資を始めると、「この出費は経費になるのか?」と疑問に思うことはよくあります。税務上の「必要経費」は、簡単にいうと「不動産収入(家賃など)を得るために直接使ったお金」のことです。 

 

所得税法では、不動産所得は「総収入から必要経費を引いて」計算すると決まっています。つまり、家賃収入を得るためにかかった費用、またはそれに関連する費用でなければ、経費として認められません。 

 

ただし、困るのが、プライベートと事業の支出が混ざっているケースです。たとえば、自宅の一部を不動産投資の事務所として使う場合の家賃や光熱費。これは全額経費にはできませんが、「家事按分」という方法を使います。 

 

家事按分とは、全体の支出のうち、不動産投資に使った割合を計算し、その分だけを経費にする方法です。自宅の家賃が月10万円で、床面積の20%を投資専用スペースにしている場合、「10万円 × 20% = 2万円」を家賃として経費にできます。同じように、物件管理に使う携帯電話の料金も、利用時間などで分ける必要があります。 

 

割合をどのように計算したかを説明できるように、「合理的な基準」で計算することが大事です。 

【一覧】これはOK?不動産投資の経費例

どんな費用が経費として認められやすいのか、見てみましょう。以下のものは、不動産収入のために必要だと説明しやすいものです。 

 

■税金

・固定資産税・都市計画税:物件を所有している限り、毎年かかる税金

・不動産取得税:物件を買った時だけかかる税金

・登録免許税・印紙税:登記やローン契約の時にかかる税金

・所得税や住民税は経費になりません※後述

 

■物件の維持管理

・管理費・修繕積立金:(マンションの場合)管理会社への管理費用や、将来の修繕のための積立金

・修繕費:退去時の原状回復、給湯器やエアコンの交換、外壁塗装など。ただし、物件の価値を上げるような大規模な改修は「資本的支出」となり、一度に経費にできず、「減価償却」が必要です。

 

■ローン

・ローン金利:ローンの「利息」は経費になりますが、元本は経費になりません。

・ローン事務手数料・保証料:ローンを組む時に金融機関に払う費用

 

■減価償却費 

これは不動産投資ならではの経費です。建物や設備は古くなるので、購入費用(建物部分)を、法律で決められた年数で分割し、毎年少しずつ経費にします。たとえば、2,200万円の建物を購入(耐用年数22年)した場合、毎年100万円(2,200万円 ÷ 22年)を「減価償却費」として経費にできます。実際にお金が出ていかなくても、必要経費となるため、節税になる大切な項目です。 

 

■その他 

・交通費:物件の確認、管理会社との打ち合わせ、セミナー参加などのための電車代、ガソリン代など

・通信費:物件管理に使う携帯電話代、ネット料金(家事按分が必要な場合あり)

・新聞図書費:不動産投資の情報収集のための本、雑誌、Webサイトの購読料

・税理士・司法書士への報酬:確定申告や登記を依頼した費用

・雑費:管理会社への振込手数料、物件確認用の地図コピー代など

迷ったら注意!判断が難しい経費

経費になるものもあれば、そうでないもの、判断が難しいものもあります。 

 

明確にNG(認められない)経費

まずは、経費として計上してはいけない代表例です。 

 

・ローン元本

ローンの返済額のうち「元本」部分は、経費になりません。これは「費用」ではなく、「借金の返済」だからです。経費になるのはあくまで「利息」部分のみです。 

 

・所得税・住民税

これらは、不動産投資などで得た「所得(儲け)」に対して個人として課される税金です。所得を生み出すための「費用」ではないため、経費にはなりません。 

 

・プライベートな支出

当然ですが、家族旅行の費用、投資とは関係のない友人との飲食代、趣味の道具の購入費などは、家事費であり経費にはなりません。 

 

判断が分かれるグレーゾーンな経費

次に、税理士としてもしばしばご相談を受ける、判断が難しい費用の例です。これらは、経費計上の「ロジック(論理)」が重要になります。 

 

・交際費(飲食代など)

不動産会社や管理会社の担当者との打ち合わせ、あるいは他の投資家との情報交換のための飲食代などです。  

 

【ロジックの立て方】 

「誰と、何のために」支出したのかが問われます。「不動産所得を得るための情報収集」「管理会社との良好な関係構築による円滑な物件運営」など、事業関連性を客観的に説明できるかが鍵です。単なる友人との飲み会はNGですが、事業目的が明確であれば、経費として認められる可能性は高くなります。領収書に参加者の氏名や目的をメモしておくと良いでしょう。 

 

・スーツ代・被服費

「物件視察に行くためにスーツを買った」という場合、経費計上は原則として難しいです。スーツはプライベート(冠婚葬祭や他の仕事)でも着用可能とみなされるため、家事費とされることが一般的です。  

 

【ロジックの立て方】 

「不動産投資セミナーの登壇専用の衣装」など、明らかにその用途にしか使わないと証明できれば可能性はゼロではありませんが、未経験者の段階では難しいでしょう。

 

・PC(パソコン)購入費

物件管理や情報収集、確定申告のためにPCを購入した場合です。

 

【ロジックの立て方】  

まず、購入金額が10万円未満であれば、「消耗品費」として全額をその年の経費にできるのが一般的です。10万円以上の場合は「固定資産」となり、原則として4年間の減価償却が必要になります。 ここでも「家事按分」が問題になります。もしそのPCをプライベート(動画視聴やネットサーフィンなど)でも使うのであれば、使用時間などで合理的に按分(例:投資用50%、プライベート50%)し、投資用の割合だけを経費(または減価償却の対象)とします。 

領収書・レシートの集め方・管理法

どんなに「経費だ」といっても、証明する「証拠」がないと、税務調査で認められない可能性があります。その基本的な証拠が、領収書やレシートです。不動産投資を始めたら、「事業用」と「プライベート用」の支出を分け、関連する領収書・レシートはすべて集めるようにしましょう。 

 

正しい領収書・レシートとは?

以下の項目が書かれていると、証拠として認められる可能性が高まります。 

 

1.日付:使った日

2.金額:支払った金額

3.相手先:お店や会社の名前

4.但し書き:何に使ったか

 

特に重要なのが「但し書き」です。「お品代」だけでは、何を買ったか分からず、疑われる原因になります。「XX様と打ち合わせ飲食代」「不動産投資関連 書籍代」「物件視察 駐車代」など、具体的に書いてもらうか、自分でメモしておきましょう。 

 

おすすめの管理法

集めた領収書は、確定申告の期間(白色申告で5年、青色申告で7年)保存する必要があります。 

 

・アナログ管理

月ごと、または「交通費」「交際費」などの費目ごとに封筒やファイルを用意して、入れていくだけでもOKです。日付順にノートに貼るのも良いでしょう。 

 

・デジタル管理(推奨)

クラウド会計ソフト(freee, マネーフォワードなど)を使うと便利です。スマホでレシートを撮影するだけで、AIが日付や金額を読み取ってくれます。銀行口座やクレジットカードを連携すれば、入出金の記録も自動で取り込まれ、帳簿付けが楽になります。 

 

経理に時間をかけたくない場合は、早めにツールを導入し、「領収書をもらったらすぐに撮影する」習慣をつけておくことがおすすめです。 

 

まとめ

不動産投資の経費は、「不動産収入のために本当に必要だったのか」を説明できるかで決まります。管理費やローン金利のように経費になるものから、交際費やPCのように判断が難しいものまであります。領収書やレシートを、「日付・金額・相手先・内容」が分かるようにきちんと保管・管理することが大切です。 

 

判断に迷う場合は、専門家に相談しましょう。 

 

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宮路 幸人

宮路幸人税理士事務所

税理士/CFP

※本連載は、株式会社ベルテックス『会社員のための不動産投資マガジン』から転載したものです。