老後に本当に必要な資金はコレとコレ

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和4年度)によると、その平均受給額は、国民年金が5万6,316円、厚生年金が14万4,982円となっています。年金をもらう年齢が近づいてくると、自分が受け取る年金額についての知らせが届きます。それを見て、多かれ少なかれ不安を覚えるのは当然というべきかもしれません。

しかし、「この額では足りない……」といくら嘆いてみても、天からお金が降ってくるわけではなく、この範囲でなんとか暮らし、足りないぶんはこれまでの蓄えを取り崩していくほかないのが老後の暮らしです。

現役時代に稼いでいた額と比べて不安になるのはわからないではありませんが、住宅ローンや子供の教育費など、「人生の二大出費」は終わっていることが多いでしょう。では、この先、どんな出費があるのでしょうか。

生活費は当然必要ですが、あと大きなところでは医療費(介護費用)程度ではないでしょうか。たしかにひとり老後ともなると、入ってくるものは少なくなりますが、そのぶん、出ていくものも少なくなるのです。

「案ずるより産むがやすい」というように、実際に年金暮らしを始め、半年もして慣れてくると、不安を口にする人はめっきり減ってくるようです。

「カニは自分の甲羅に合わせて穴を掘る」という言葉もありますが、人も自分の財布のサイズに合わせて、ちゃんと暮らしを軌道修正していく知恵を持ち合わせているのです。「身の丈で生きる」というのも、老後の知恵のひとつでしょう。

なんとかなる。なんとかやっていく――。これが年金暮らしの心得です。

細かすぎる人生プランは立てないほうがいい

勤勉で真面目な人が多い日本人は、何をするのも一生懸命。やり始めたら目的に向かって、わき目もふらず努力する人が多いものです。それはいわゆる老後を迎えても変わりません。

しかし、60代後半~70代ともなると、体力も気力もだんだん下降気味になり、そこであまり張り切りすぎるとスタミナ切れになって、途中で投げ出すようなことになりかねません。

節約にしても、シンプルな暮らしぶりについても、息の長いスタンスで続けることに意味があるのですから、一過性のイベントで終わらせてしまっては、意味がありません。

このことは「人生プラン」にもいえます。いや、「人生プラン」という総論にこそ、細かすぎない、ゆるい設定を考えるべきではないでしょうか。高齢になっても、人生に目的や目標を持つのは悪いことではありませんが、あまりにストイックになるのは考えものです。いちいち「今日はプランにない無駄遣いをしてしまった」「このところダラダラしすぎているのではないか」などと気に病んでいたのでは、すぐに疲れてしまいます。

若い頃ならともかく、プランどおりに進んでいるかをいちいちチェックするのはいかがなものでしょうか。

「3年後までには蓄えを5割増しにする」「1年後には体重を〇キロ落とす」などと具体的にプランを設定して、達成できていたら喜び、そうでなかったら落ち込むというのは、悠々自適を旨とする「ひとり老後」にはまったく似合いません。

老後に細かすぎる人生プランは不要。自分には少し甘いくらいでちょうどいいのです。大切なのは自分のペースを守ること。それだけです。

保坂 隆

保坂サイコオンコロジー・クリニック院長