みなさんは投資信託を選ぶ際、どのポイントを重視しますか? これまでの運用実績や、期待リターン、購入手数料などなど……。どれも重要ですが、実は見落としがちな「重要ポイント」があります。投資信託を保有するうえで“最初に確認しておきたいポイント”とはなにか、投資信託の仕組みとあわせてみていきましょう。15年間の証券会社勤務を経て、現在はJ-FLEC(金融経済教育推進機構)の講師としても活動するCFPの倉橋孝博さんが解説します。
「運用実績」でも「期待リターン」でもない!?…投資信託を選ぶとき、最初に確認したい“たったひとつ”のポイント (※画像はイメージです/PIXTA)

投資信託にかかる「コスト」とは

 

まず、投資信託の購入には「購入手数料」がかかります。購入手数料は上限が設けられており、高いものでは3.3%(消費税込み)ほど。これは購入代金にかかります。

 

購入代金は、以下の式で求めることができます。

 

購入代金=「投資信託の1口の基準価格」×「購入口数」

 

企業の利益が増えれば株価が上がるように、投資信託の運用が好調であれば基準価格も上昇します。

 

仮に基準価格が1万円で100口購入した場合、購入代金は100万円です。手数料率が3.3%の場合、3万3,000円が販売した金融機関の収益です。ただし、最近は「ノーロード」と呼ばれる、購入手数料が不要な投資信託も増えてきました。

 

次に解約時のコストです。解約時には「信託財産留保額」というものがかかるケースがあります。これは販売会社などの収益になるものではなく、「それまで保有していた投資信託に少しお金を残していく」といったイメージです。

 

投資信託は株や債券で運用されているため、投資家から解約の依頼があれば、運用担当者は資産を現金化しなければなりません。その際に発生する費用などを、解約する投資家自身が負担するといった意味合いのコストが「信託財産留保額」です。

 

この信託財産留保額はおおむね基準価格の0.3%程度ですから、大きな負担にはならないでしょう。また、このコストが不要な投資信託も多くあります。

 

知っておきたい「ステルスコスト」の存在

さらに、投資信託を保有しているあいだもコストがかかります。これは「信託報酬」と呼ばれるもので、投資信託の運用管理費と理解してください。少し乱暴な言い方になりますが、投資信託を買ってしまうと、解約までずっとお金を払い続ける必要があるのです。

 

ただし、別途現金を支払うのではなく、運用されているお金のなかから差し引かれ、その分基準価格が調整されています。

 

国内ではいま、原材料の上昇や人件費の高騰で商品の値上げが続いていますよね。そのなかには、価格転嫁するのではなく、価格はそのままに内容量を減らす「ステルス値上げ」が行われるケースもあります。信託報酬は、見えにくいという観点から「ステルスコスト」といってもいいでしょう。投資信託によって信託報酬は異なり、多くは年率0.1~2%程度で設定されています。

 

この信託報酬をもう少し掘り下げてみます。ある投資信託を100万円購入したとしましょう。仮に毎年3%複利で運用できたとすると、10年後には約134万円になっています。しかし「信託報酬」がかかるので、その分差し引かれてしまいます。

 

「信託報酬」が0.5%ならば約128万円、1.0%ならば122万円、1.5%ならば116万円にしかなりません。また、「信託報酬」は利益が出ていなくても(評価損を抱えている状況でも)必要になります。

 

このように「信託報酬」は大きなコストであるため、運用を担うファンドマネージャーには利益が出るようしっかり手腕を発揮してもらいたいところです。

 

ただし、目論見書や運用報告書に記載されている実績は過去のもの。参考にはなりますが、将来を約束するものではありません。そのため、投資信託を選ぶ際はまず「信託報酬がどれぐらいか」を確認し、運用実績に見合っているかどうかチェックしましょう。