国土交通省の「住宅市場動向調査」によると、住宅購入者の平均年齢は新築注文住宅が41~42歳、分譲戸建・マンションは38~40歳前後が中心とされています。他方、現役時代に社宅等で暮らしていた人のなかには退職後に住宅を購入するケースも少なくないようです。ただし、年金生活に入ってから購入する場合、購入する住宅は慎重に選ばなければ、老後の家計に思わぬひずみが出かねません。退職後に住宅を購入したとある夫婦の事例をみていきましょう。牧野寿和CFPが解説します。
定年後に!? 絶対後悔するからやめときなよ…年金月23万円の65歳夫婦、娘の忠告を無視して〈庭付き一軒家〉を購入→“夫だけが”後悔したワケ【CFPの助言】
娘からの冷静な忠告
そこに、結婚が決まった一人娘のCさんが話に加わります。
「定年後に家を買うの!? 絶対後悔するから、やめときなよ」
Cさんは、浮かれる両親に対して冷静に忠告します。
ただ、自分の反対も聞かず楽しそうに“理想の老後”を話し合う仲の良い両親を見ていた娘は、「どうしてもというならもう止めないけど、私たちは新居にマンションを買ったから、父さんや母さんが亡くなった後は、私がもらって老夫婦にも貸せるような、バリアフリーの家を買ってね」と現実的な案を提示してきました。
「娘の反対を押し切って買うんだから、せめて娘の希望通りバリアフリーの物件を探そう」
こうしてAさんはバリアフリーの平屋住宅に絞り、物件探しに明け暮れた結果、定年直前に予算内で理想の物件を見つけました。そしてBさんに「庭付きでお手頃の戸建て住宅を見つけた」と切り出したのでした。
そのころBさんは、Aさんといっしょにマンションを探すものだと思って、具体的な物件探しはしていなかったそうです。そのため、社宅退去が迫っていたこともあり、Aさんの案に渋々賛同したのでした。
結局、住宅の購入代金を支払ったあと、退職金を含めた3,850万円の貯蓄と、夫婦で月23万円の老齢厚生年金とで「老後の暮らしは問題ない」と、夫婦はAさんお気に入りの中古物件を購入しました。
引っ越しから半年後…夫婦の満足度は「真逆の結果」に
半年後、Cさんが両親の新居を訪ねたところ、新居に対する両親の感想は“購入前とは真逆だった”と笑います。
Aさん「老体には庭の手入れがキツい……雑草が気になって草をむしると腰が痛い。除草剤でも撒くか。あぁ……こんなことならマンションのほうが良かった」
Bさん「除草剤を撒くなってとんでもない。花を植えたり小物を置いたり、土にさわれるのがこんなに楽しいなんて! 私はこの家に住めて本当に良かったわ」
Bさんは、近所の人たちのガーデニングサークルにも入会して、友達も一気に増えたとご満悦。また友だちを室内に招くと、段差がなく、手すりが付いた室内や、洗面所や浴室の引き戸など、バリアフリーの設備は好評です。