娘からの冷静な忠告

そこに、結婚が決まった一人娘のCさんが話に加わります。

「定年後に家を買うの!? 絶対後悔するから、やめときなよ」

Cさんは、浮かれる両親に対して冷静に忠告します。

ただ、自分の反対も聞かず楽しそうに“理想の老後”を話し合う仲の良い両親を見ていた娘は、「どうしてもというならもう止めないけど、私たちは新居にマンションを買ったから、父さんや母さんが亡くなった後は、私がもらって老夫婦にも貸せるような、バリアフリーの家を買ってね」と現実的な案を提示してきました。

「娘の反対を押し切って買うんだから、せめて娘の希望通りバリアフリーの物件を探そう」

こうしてAさんはバリアフリーの平屋住宅に絞り、物件探しに明け暮れた結果、定年直前に予算内で理想の物件を見つけました。そしてBさんに「庭付きでお手頃の戸建て住宅を見つけた」と切り出したのでした。

そのころBさんは、Aさんといっしょにマンションを探すものだと思って、具体的な物件探しはしていなかったそうです。そのため、社宅退去が迫っていたこともあり、Aさんの案に渋々賛同したのでした。

結局、住宅の購入代金を支払ったあと、退職金を含めた3,850万円の貯蓄と、夫婦で月23万円の老齢厚生年金とで「老後の暮らしは問題ない」と、夫婦はAさんお気に入りの中古物件を購入しました。

引っ越しから半年後…夫婦の満足度は「真逆の結果」に

半年後、Cさんが両親の新居を訪ねたところ、新居に対する両親の感想は“購入前とは真逆だった”と笑います。

Aさん「老体には庭の手入れがキツい……雑草が気になって草をむしると腰が痛い。除草剤でも撒くか。あぁ……こんなことならマンションのほうが良かった」

Bさん「除草剤を撒くなってとんでもない。花を植えたり小物を置いたり、土にさわれるのがこんなに楽しいなんて! 私はこの家に住めて本当に良かったわ」

Bさんは、近所の人たちのガーデニングサークルにも入会して、友達も一気に増えたとご満悦。また友だちを室内に招くと、段差がなく、手すりが付いた室内や、洗面所や浴室の引き戸など、バリアフリーの設備は好評です。