SNSを中心に話題となっている“独身税”という言葉をご存じでしょうか。これは「結婚していない人に一律で課される税金」というわけではありません。ではなぜ、あたかも独身者だけが負担するような呼称が独り歩きしてしまっているのでしょうか? 41歳女性の事例をもとに、“独身税”と呼ばれる制度の実態と、騒がれている背景を掘り下げていきましょう。石川亜希子CFPが解説します。
結婚がそんなに偉いの!?…手取り月26万円・41歳非正規女性が思わずキレた、69歳母の「何気ないひと言」【来年スタート“独身税”の実態】
どうやって結婚しろと…美穂さんを追い詰める「生活苦」
(別に結婚したくないわけじゃないのに、独身が悪いみたい。毎月家賃と生活費で生活ギリギリなのに、恋愛する暇なんてあるわけないでしょ? こんな状態でどうやって結婚しろっていうの!?)
実は、美穂さんは契約社員でした。そのため激務にもかかわらず年収は約400万円、毎月の手取りは26万円ほどです。物価も上がり、税金や保険料の負担も少しずつ増えるなか、生活の実感はますます厳しくなっています。
一方、妹の紗耶香さん(仮名・38歳)は結婚して2人の娘(5歳・3歳)がおり、聡子さん夫婦が暮らす実家から車で30分ほどのところに住んでいます。世帯年収は約800万円ほど。
テレビを見る時間もない美穂さんは、母が言っていた“独身税”という言葉が気になり、怒りに震える手で検索してみました。すると、「子ども・子育て支援金制度について」というページにたどり着きます。
「“社会全体で子育て世帯を応援”……? 私は私の生活でいっぱいいっぱいなのに、私より稼いでて幸せそうな紗耶香たちを支援しろってこと?」
“独身税”の意味を理解した美穂さんは、思わず持っていたスマホをベッドに投げつけました。
むしろ迷惑…妹・紗耶香さん夫婦側の“本音”
他方、小さな子どもがいる紗耶香さん夫婦も共働きで、こちらも日々自分たちの生活で精一杯です。孫が体調不良のときもどうしても仕事を休めず、無理を言って聡子さんに孫の世話をお願いすることもしばしば。住宅ローンもあって、家計はギリギリです。そのうえ、子どもたちには今後、もっとお金がかかります。
「支援があるのは助かるけど、これで日々の暮らしがどれだけ変わるのかわからない。子育て世帯だけ得をするみたいな雰囲気はむしろ迷惑」というのが正直なところです。
「子ども・子育て支援金制度」は、実際にはすべての医療保険加入者が対象であるにもかかわらず、“独身税”と揶揄され、幅広い世代から不評を買っています。いったいなぜここまで不評なのでしょうか。