SNSを中心に話題となっている“独身税”という言葉をご存じでしょうか。これは「結婚していない人に一律で課される税金」というわけではありません。ではなぜ、あたかも独身者だけが負担するような呼称が独り歩きしてしまっているのでしょうか? 41歳女性の事例をもとに、“独身税”と呼ばれる制度の実態と、騒がれている背景を掘り下げていきましょう。石川亜希子CFPが解説します。
結婚がそんなに偉いの!?…手取り月26万円・41歳非正規女性が思わずキレた、69歳母の「何気ないひと言」【来年スタート“独身税”の実態】
年末年始も会えず…2人の娘を持つ69歳母の「心配事」
埼玉県で夫と暮らす後藤聡子さん(仮名・69歳)は、夫婦で月約26万円の年金を受け取り暮らしています。年金だけでは少し心許ないため日々節約に努め、ときどき遠出をすることが夫婦にとってのささやかな楽しみです。
そんな聡子さんには、2人の娘がいます。
長女の美穂さん(仮名・41歳)は、広告関係の企業に勤めており、都内で一人暮らし。激務なようで、聡子さんがいつ連絡をしても「ごめん、いま仕事中。あとでいい?」と返ってきます。実家にもなかなか顔を出さず、もう何年も顔を合わせていません。
美穂さんが月どれくらい稼いでいるのかもわかりませんが、「都内での一人暮らしは家賃の負担も大きいだろう」と心配した聡子さんは、いまでもときどき、お米やレトルト食品などの仕送りをしています。
――そんなある日のこと。聡子さんは年末年始の予定を聞くため、美穂さんに電話をかけました。すると、珍しく美穂さんが電話に出てくれました。
「……あ! もしもし?」
「もしもし。ちょっとなに? 忙しいんだけど」
久しぶりに娘の声が聞けたことで、聡子さんは思わず声が弾みます。
「もしもし、ねえ、元気? 体調は大丈夫? 無理してない? こないだのお米、もう食べた? 調達するの大変だったのよ。どこも高くって……」
そんなに偉いの!?…娘が思わず声を荒らげた「母の一言」
その後も、聡子さんのおしゃべりは止まりません。
「……要件はなに?」
「ああ、そうそう。あんたたまには実家にも顔を出したら? 紗耶香の子どもたちもずいぶん大きくなったのよ。結婚してないんだから、いつでも帰ってこられるでしょう」
「……は?」
電話の向こうで絶句する美穂さんを気にすることなく、聡子さんは続けます。
「独身なんだし、少しくらい時間つくれるでしょう。紗耶香は仕事もしてるのに旦那さんと孫たちを連れて、ときどき顔出してくれるのよ。今年の年末年始くらい帰ってこられない? そういえば、こないだテレビで『独身税』なんてやってたわよ。実家に顔を出すか結婚するか、どっちかにしなさいよ」
「なにそれ……意味わかんない。結婚してるのがそんなに偉いの!?」
娘の予想外の反応に呆気にとられた聡子さんでしたが、次の瞬間、電話は切れてしまいました。