NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)の制度が拡大したことで、資産運用に取り組む人が増えました。これ自体は歓迎すべき動きでしょう。しかし、実はこの潮流が、がん治療における「お金の問題」に思わぬ影響を与えていることはあまり知られていません。がん治療とは切っても切れない「お金の問題」の解決策について、看護師FPの黒田ちはる氏の著書『【図解】医療費・仕事・公的支援の悩みが解決する がんとお金の話』(彩図社)からヒントを探します。
「NISA」や「iDeCo」の普及は歓迎すべきだが…資産運用が〈がん治療〉に与える影響【看護師FPが解説】
お金の話は家族でもしづらい
意外かもしれませんが、がん治療における「お金の問題」について、解決の大きな障害となるのは、「家族との話し合いの難しさ」であることが少なくありません。
「どのタイミングで切り出せばいいのか」「お金の優先順位が家族で違って話が進まない」「そもそもお金の話をするのが苦手」など、家族との話し合いに際してハードルを感じている方は少なくありません。
がん治療中は、医療費や生活費のことを考えながら、家族でお金の管理や使い方について決めていくことが大切です。しかし、感情的になってしまったり、逆に遠慮してしまったりと、なかなかスムーズに話せないこともあります。
そこで、家族でお金の話をしやすくするためのポイントや、話し合いを進めるコツをご紹介します。
お金について家族で話し合えることが何より大事
相談者の中には、「がんになる前はお金のことを家族で話し合う習慣がありませんでした」という方も少なくありません。
治療で大変な時にお金の話をすること自体がストレスになることもありますが、家族での話し合いが早ければ早いほど、問題を未然に防ぎ、解決策を増やすことにつながります。
なかなかうまくお金の話を切り出せない相談者の場合は、「ご家族へどう切り出すかの作戦会議」を行うこともあります。家族が病気に向き合えておらず、お金の話し合いに応じられない状況だったため、まずは病状説明に同席し、医療従事者からのサポートを受けることで話し合いが進んだケースもありました。
家族の間で状況が十分に共有されていないと、必要な対策や解決策を話し合う前に、お金の問題として認識されにくいことがあります。その結果、せっかく解決策が見つかっても、実現できないこともあります。状況は人それぞれ異なるため、一人で悩まずに医療従事者や私たちお金の専門家に相談しながら進めていきましょう。
がん治療の時には財布をひとつに
最近では共働き世帯が増え、夫婦別々で家計を管理する家庭も多くなっています。普段はそれぞれが自分の範囲でやりくりできていたとしても、どちらかががんになったり、収入が減ったり、医療費が増えたりすると、これまでとは異なるお金のバランスが生じ、大きく家計を変えなければならない場合があります。
片方の収入だけでは対応が難しい場合でも、世帯全体の収入として考えることで、負担感が減ることもあります。また、家計全体を視える化して整理することで、これまで見えていなかった支出が明確になり、無理のない調整が可能になります。
家計を管理する方法は家庭によって異なりますが、がん治療に向けては、まず全体のお金の流れを把握することが重要です。そのうえで、今後の治療費や生活費の見通しを立て、家族と一緒に柔軟に家計を調整していきましょう。