夫を亡くした妻に襲いかかった「さらなる悲劇」

宮内加代子さん(仮名・67歳)は、夫婦ともに正社員として長く勤め上げ、定年後は毎月それぞれ15万円ずつ、合計で30万円の年金で夫の弘さん(仮名・69歳)と2人、静かに暮らしていました。

貯金も1,500万円ほどあり、「老後はぜいたくをしなければ安心して暮らせる」と思っていたといいます。

そんな平穏な日々が一変したのは、昨年の冬のことです。

いつもどおり夕食を終えたあと、「今日は寒いな。お風呂で温まってくるよ」と言って浴室へ向かったきり、夫は還らぬ人となったのです。死因はヒートショック。急激な温度変化により心臓に負担がかかり、命を落としてしまったのでした。

「さっきまで元気だったのに、どうして……」

長年寄り添ってきた伴侶を突然失い、加代子さんは深い悲しみに暮れました。

年金事務所で突きつけられた「衝撃の事実」

夫を失った悲しみのなかでなんとか葬儀を終え、遺品整理もひと段落した加代子さんは、今後の生活設計を立てるために年金事務所を訪れました。

加代子さんはあらかじめインターネットなどで遺族年金について調べており、「夫の厚生年金の4分の3が遺族年金として支給される」との情報を得ていました。

夫の年金15万円のうち、およそ9万円が老齢厚生年金にあたると知っていたため、「6~7万円くらいの遺族年金が出るはず」と心のなかで見積もりを立てていたのです。ところが……。

担当職員は、まったく予想だにしていない金額を口にしました。

「残念ですが……お調べしたところ、遺族年金は支給されません」

「えっ……どういう意味ですか? なにかの間違いでしょう?」

思わず聞き返すと、担当者は説明を続けます。

「宮内さまご自身の老齢厚生年金の金額が、ご主人とほぼ同額ですよね。そのため、遺族年金に調整が入り、結果的に受給資格が発生しないんです」

加代子さんは言葉を失いました。

これまで2人で30万円だった生活費は、今後はたった15万円でやりくりしなければなりません。貯金はあるとはいえ、医療費や介護費用の将来を考えると、不安が胸を締めつけます。

加代子さんは、重い足取りで窓口を後にしました。