北本家の「その後」

増える一人親家庭と「親世代の支援」

日本では、離婚率の上昇とともに一人親家庭が増加傾向にあります。厚生労働省の調査によると、母子家庭の約5割が貧困状態にあるとされており、その多くが非正規雇用で働いているようです。

[図表]世帯と貧困率の関係性 出典:厚生労働省 2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況を参考に筆者作成
[図表]世帯と貧困率の関係性
出典:厚生労働省 2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況を参考に筆者作成

パートタイムや短時間労働では十分な収入を得ることが難しく、実家や親の支援に頼るケースも多く見られます。とはいえ、親としては子どもが再び自分の力で生活を立て直し、安定した暮らしを願うのは当然のことです。

経済的な自立を促すためには、次のような取り組みが有効とされています。

・収入を安定させること(正社員など)

・支援制度の活用

・親からの援助

安定した雇用と収入の確保は、生活を立て直すうえで欠かせない要素です。また自治体には、ひとり親家庭に向けた支援制度が整備されています。行政窓口や地域の相談センターを利用することで、経済的・心理的な支えを得られるでしょう。

こうした支援のもと、生活の立て直しと精神的な自立を少しずつ進めていくことが大切です。

北本夫妻も、愛里さんが正社員として働けるようになるまで生活費の一部を援助しました。

その後、愛里さんは実家から通える範囲で就職先を見つけ、安定した収入を得られるようになりました。

北本夫妻が断腸の思いで下した「実家から出ていってもらう」という決断は一見酷かもしれません。しかし、愛里さん自身に危機感が芽生えたことで、「1年以内に実家を出る」という目標を決め、経済的にも精神的にも少しずつ自立への道を歩み始めているそうです。

辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP