離婚や非正規雇用の増加など、金銭的な事情から実家に出戻りする現役世代がいます。経済的な自立が難しいことから親世代に頼らざるを得ないケースも多く、これが親世代に新たな負担を生んでいるようです。離婚をきっかけに娘と孫を迎え入れたものの、家計の均衡が少しずつ崩れていったとある家族の事例をもとに、親子の同居がもたらす“理想”と“現実”をみていきましょう。辻本剛士CFPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「戻ってきたらどうだ?」とは言ったが…午前10時すぎまでスヤスヤ眠る41歳実家出戻り娘。年金月36万円・70代元公務員夫婦が〈娘の寝顔〉を見て決めた「やっぱり追い出そう」の経済的やさしさ【CFPの助言】
北本家の「その後」
増える一人親家庭と「親世代の支援」
日本では、離婚率の上昇とともに一人親家庭が増加傾向にあります。厚生労働省の調査によると、母子家庭の約5割が貧困状態にあるとされており、その多くが非正規雇用で働いているようです。
パートタイムや短時間労働では十分な収入を得ることが難しく、実家や親の支援に頼るケースも多く見られます。とはいえ、親としては子どもが再び自分の力で生活を立て直し、安定した暮らしを願うのは当然のことです。
経済的な自立を促すためには、次のような取り組みが有効とされています。
・収入を安定させること(正社員など)
・支援制度の活用
・親からの援助
安定した雇用と収入の確保は、生活を立て直すうえで欠かせない要素です。また自治体には、ひとり親家庭に向けた支援制度が整備されています。行政窓口や地域の相談センターを利用することで、経済的・心理的な支えを得られるでしょう。
こうした支援のもと、生活の立て直しと精神的な自立を少しずつ進めていくことが大切です。
北本夫妻も、愛里さんが正社員として働けるようになるまで生活費の一部を援助しました。
その後、愛里さんは実家から通える範囲で就職先を見つけ、安定した収入を得られるようになりました。
北本夫妻が断腸の思いで下した「実家から出ていってもらう」という決断は一見酷かもしれません。しかし、愛里さん自身に危機感が芽生えたことで、「1年以内に実家を出る」という目標を決め、経済的にも精神的にも少しずつ自立への道を歩み始めているそうです。
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP
![[図表]世帯と貧困率の関係性 出典:厚生労働省 2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況を参考に筆者作成](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/b/5/540mw/img_b5b141a47fdbc1954db4c0c42298c10649501.jpg)