「お金の心配はいらない」はずが…父の通帳残高に絶句

「父の言葉を信じて安心していたのですが……通帳残高を見て、思わず言葉を失いました」

そう語るのは、地方に住む父を亡くした女性、久本直子さん(仮名・57歳)です。

直子さんは横浜で夫と娘の3人暮らし。直子さんには54歳の弟がいますが、東京で家庭を築き、隣県で暮らしています。

直子さんの父は、10年ほど前に妻を亡くしてからは一人暮らし。心配した直子さんは何度か援助や同居を申し出ましたが、父はいつも笑いながらこう答えたといいます。

「父さんには退職金の2,000万円がある。だからお金の心配はいらない。いざとなったら施設に入るから、お前たちに迷惑はかけないよ」

その言葉を聞き、直子さんも胸をなでおろしていました。

しかし、数年後に父が病で急逝。葬儀と通夜が終わり、遺品整理をしていたときのことでした。引き出しの奥から1冊の通帳が出てきたのです。

「お金の心配はいらないと言っていたし、1,000万円くらいは残っているだろう」

漠然とそう思いながら通帳を開いた直子さん。

しかし、そこに記されていた残高はわずか「7万円」でした。

「見間違いだろうと……思わず二度見しました。別の口座に預けていたのかもしれないと他の通帳も確認しましたが、まとまった資金は確認できませんでした」

呆然とする直子さんの目に入ったのは、机の引き出しの奥にあった複数のカードローンの利用明細やキャッシングの封筒。

生活の跡が残る実家は荒れており、ところどころに開封されていない郵便物が無造作に置かれていました。

「父がこんなものを使っていたなんて信じられませんでした」と驚く直子さん。

「小さな赤字の積み重ね」が招いた悲劇

通帳やクレジットカードの明細を確認すると、借入額は数十万円単位。特別な浪費は見当たりませんでしたが、パチンコ店近くのATMの利用履歴や、通販サイトで購入したゴルフ用品の明細が並んでいました。

父は普段の生活費を年金収入でまかなっていたようです。ただ、趣味のゴルフやギャンブルなどの「娯楽費」は毎月少しずつ赤字となり、その補填をカードローンで行っていた様子がうかがえました。

「毎月1〜2万円の赤字なら大丈夫。退職金があるから」

そんな考えのもと、少しずつ貯金を切り崩していたのでしょう。