父と同じ「52歳で死ぬ」と思い込んでいた孤独な教師

うつ病だった母はある日の夕食中、父が「まずっ」とつぶやいた瞬間、衝動的に窓から身を投げました。父は52歳のときに病気で亡くなり、どこか厭世的な考えが抜けない自分は、父の年齢以上には生きられないのだと思い込んでいました。

少し精神的にもろい自分はわかっていたけれど、相手に愛されることを求めすぎて離婚を2回繰り返します。

そんななか、教師の仕事を通じて知り合った5つ年上の女性となんとなく話す機会が増えて、流れで結婚することになりました。56歳です。お互い家族もいないので婚姻届を出すだけ。

彼女の言葉はシンプルで、「いつかは必ず死ぬけれど、それがいつかは誰にもわからない」「人生はプラマイゼロ、これだけたくさん苦労をしたのだから、あとは楽しみしかない」と、まるでメンターです。

その後、定年を迎え、彼女の夢を叶えるために都市部と地方にそれぞれ自宅をもち、行ったり来たりの二拠点生活を送ります。友だちの多い彼女の人脈で子どもから高齢者までわざわざ飛行機に乗ってやってきてくれて、田舎の家で焚き火を囲み、音楽とおしゃべりの日々。

人生って、こんないいことがあったんだね、もっと長生きしたい。65歳になったいま、近所の子どもたちに勉強を教えたり、現場で汗を流す若い教員の相談相手として忙しく過ごしています。

丸山 法子
株式会社Rensa 取締役/福祉事業部 リエゾン地域福祉研究所 代表

※本記事は『定年を意識したら読む本 定年のトリセツ』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。