米国の大学生の約4割が学費や生活費を学生ローンで賄っているといいます。日本でも奨学金利用率は50%を超えており、どちらの国も若者が多額の負債を背負って社会に出る構造は同じといえます。本稿は、ニューヨーク在住23年目のファッション/テクニカルデザイナー・あっち氏の著書『ニューヨークとファッションの世界で学んだ 「ありのままを好きになる」自信の磨き方』(KADOKAWA)より一部抜粋・再編集し、米国における大学費用の実態をご紹介します。
トランプ政権が“強制回収”再開…アメリカの大学生〈4300万人〉が背負う「学生ローン」という重荷
時代の変化…「ブルーカラーの仕事」が人気になりつつあるワケ
もし、米国で学生ローンを払えなかったらどうなるのでしょうか。
まず、返済が遅延すると、延滞料が発生し、さらに利子が加算されます。もっとも深刻な影響は、信用スコア(クレジットスコア)の低下です。信用スコアが下がると、住宅ローンや自動車ローンなど、他のローンの金利が高くなったり、そもそも借り入れができなくなったりします。最悪の場合「デフォルト(債務不履行)」とみなされて、給料や税金の還付金の差し押さえが行われるなど、強制的な回収措置が取られます。
学生ローンは若者にとって、とても重い負担です。学生ローンの返済が結婚、出産、住宅購入、起業などを遅らせ、格差拡大や米国経済そのものの成長の妨げになるのでは、という見方もあります。バイデン前大統領は、低・中所得層向けに最大2万ドルの学生ローン返済免除(Loan Forgiveness)を提案しましたが、「規模が大きすぎる」として2023年に連邦最高裁が違憲と判断し、頓挫しました。
コロナ禍では学生ローン返済が一時的に停止され、2023年まで延長されていました。その後もしばらくは、強制的な回収には踏み切っていなかったものの、トランプ政権になり、「借りたものは返すのが当たり前」という立場から、再び学生ローンの回収が再び始まったのです。
これは前政権とは真逆の姿勢です。これにより多くの人が、デフォルトのリスクに直面しているといわれています。学生ローンは政策によって大きく左右されますし、これから進学する学生には、これまで以上に大きな負担が課されることになります。
時代の変化も急激です。少し前までは、「ホワイトカラーの仕事に就けば高収入が得られる」と信じられてきました。けれども今では、そうした知的労働こそAIに置き換えられやすくなり、最近の学生たちは就職すら難しくなっています。一方で、プラマー(配管工)や電気工事、建設などのブルーカラー職はAIによる代替が難しいとして、高収入の人気職となりつつあります。
このように、時代の変化によって「正解」とされるキャリアの選択肢は大きく変わってしまいます。だからこそ大切なのは、自分が何に向いているか、何をしていると楽しいかを知ること。その軸があれば、時代がどう変わっても、自分なりの道を選ぶ力になるはずだと思います。
あっち