子育てを終え、「これからは自分たちの老後をゆっくり楽しもう」と考えていたはずの親世代が、再び子どもの経済的支援に追われるケースが散見されます。親として支援したいという思いは理解できますが、これにより自身の老後資金が枯渇するリスクも否めません。そこで今回、60代夫婦と40歳息子の事例をもとに、親子双方にとってできるだけ早く取り組むべき対策をみていきましょう。大竹麻佐子CFPが解説します。
詐欺のほうがマシでした…年金暮らしの60代夫婦、40歳息子からの「100万円貸して」LINEに不信感→アポなしで向かった長男宅で目にした"まさかの光景"【CFPの警告】
怪しいな…夫婦が下した決断は?
「これ、本当にCか?」
夫婦はちょうど、退職金詐欺で全財産を失った人のニュースを見て、「詐欺には気をつけよう」という話をしたばかりでした。不安を覚えた夫婦は、とにかく実際の状況をたしかめようと、息子が住む都内のアパートを訪ねることにしました。
まさか、そんな…夫婦が目にした「衝撃の光景」
夫婦は息子の自宅住所こそ知ってはいたものの、実際に訪ねるのは初めてです。電車とバスを乗り継いで、なんとか息子の自宅にたどり着くと、そこには予想外の光景が広がっていました。
オートロックのない、昔ながらのアパートの1階。上場企業に勤めているとは思えないほど、生活感のにじむ住まいです。ポストには督促状がパンパンに詰まり、見るからに金銭的にひっ迫している様子です。
チャイムを鳴らしても反応はなく、仕方なくドアをひねると、カギはかかっていませんでしたが部屋のなかは散らかり放題で、足の踏み場もありません。
「……おーい、C? いるのか?」
恐る恐る声をかけると、奥のほうで物音がします。2人は意を決して、ごみの山を乗り越え部屋に入りました。
息子が語ったLINEの真相
突然の訪問に驚いたのか、Cさん最初なかなか口を開きませんでした。ただしばらくして落ち着くと、Cさんは連絡した理由についてポツポツと語り始めます。
聞けば、かつて勤めていたプライム上場企業を退職し、いまはアルバイトで日銭を稼いでいるとのこと。収入が不安定ななか借金を返すため、さらに高金利の消費者金融からお金を借りているといいます。
「なるほど、そうか……」
一連の話を聞いた夫婦は悩んだ末、まず消費者金融の返済を肩代わりし、それからCさんの生活再建のために当分毎月10万円の資金援助をすることにしました。
年金暮らしのなかで毎月10万円は痛い出費ですが、「落ち込んでいるみたいだし、まずは元気を出してもらわないと」と意を決し、手を差し伸べることにしたのです。
しかし、それから半年が経ち、息子から今度は「仕送りを15万円に増やしてもらえないか」とLINEがきました。
「いつまで続くんだ。このままじゃ、自分たちの老後資金が枯渇してしまう。詐欺のほうがよっぽどマシじゃないか……」
2人は、頭を抱えています。