最近の株式相場は、トランプ米政権による相互関税政策をはじめ、米中貿易摩擦の悪化懸念や中東情勢の緊張、ロシア・ウクライナ戦争などを背景に乱高下を繰り返しています。こうしたなか、「投資はしばらく控えておこう」と考えている人もいるのではないでしょうか。ただ、それは資産形成の機会を逃す悪手かもしれません。実は、先行き不透明感の強い相場環境でも“意外なほどお手軽”に安定的な資産形成が可能なのです。そんな、筆者が考える最強の投資手法について、15年間の証券会社勤務を経て、現在はJ-FLEC(金融経済教育推進機構)の講師としても活動するCFPの倉橋孝博さんが詳しく解説します。※本記事は株式会社セゾンファンデックスが運営する『セゾンのくらし大研究』で8月1日に公開されたものです。
投資のプロが「結局これが最強」と認める“意外なほどお手軽”な投資手法【20年分の大検証】 (※画像はイメージです/PIXTA)

ドル・コスト平均法は本当に最強なのか?

 

では、本当にドル・コスト平均法での投資が「最強」なのか、より厳しい状況で検証してみることにしましょう。私が選んだ期間は、ITバブル絶頂期直前の2000年3月から、新型コロナウイルスのパンデミックが宣告された2020年3月までの約20年間(241ヵ月)です。

 

日経平均株価は2000年3月末の2万337円から、2020年3月末の1万8,917円まで約10%弱下落しています。この期間に毎月末、日経平均株価にドル・コスト平均法で1万円ずつ投資し続けたとして検証しました。

 

この期間は、まさに「激動の20年」といえます。ITバブル崩壊やアメリカ同時多発テロ、イラク戦争、アメリカ住宅バブル崩壊、サブプライムローン問題、リーマンショック、東日本大震災、アベノミクス、新型コロナウイルスのパンデミック……。トピックは枚挙にいとまがありません。

 

はたして、ドル・コスト平均法での投資で利益は出たのか? 激動の20年を振り返ってみましょう。

 

■2000年3月末

2万337円(買付総額:1万円/評価額:1万円)

……マーケットはITバブルを謳歌。しかし崩壊の足音が間近に。ちなみに、ITバブルの天井は翌4月12日の2万833.21円。

 

■2000年4月末

1万7,973円(買付総額:2万円/評価額:約1万8,800円)

……ITバブル崩壊。相場は悲観のなかで生まれ、懐疑のなかで育ち、歓喜のなかで終わる。

 

■2000年12月末

1万3,785円(買付総額:10万円/評価額:約8万5,300円)

……2000年代最初の年で「ミレニアム」とも呼ばれるが、マーケットは軟調。

 

■2001年9月末

9,774円(買付総額:19万円/評価額:約13万2,000円)

……ITバブル崩壊以降軟調な相場展開のなか、9月11日、アメリカ同時多発テロ発生。世界経済は大混乱に。日経平均株価はバブル崩壊以降初めて1万円の大台を割り込む。ドル・コスト平均法での投資は買付総額19万円に対して評価額約13万2,000円と大苦戦。

 

■2003年4月末

7,831円(買付総額:38万円/評価額:約26万円)

……ソニーショック勃発。ソニーの暴落に引きずられる格好で日経平均株価は4月28日、バブル崩壊後の最安値7,603.76円を付ける(2008年のリーマンショック時にはこの安値を一時下回る)。

ドル・コスト平均法での投資は買付総額38万円に対して評価額約26万円と30%下落。ただし、銀行への公的資金注入の効果がしだいに現れ始め、株価はこの安値を転機に上昇に転じる。

 

■2004年12月末

1万1,488円(買付総額:58万円/評価額:約60万円)

……評価額が約60万円となり、買付総額の58万円を上回る。株価低迷時に我慢して買い続けた効果が出始める。

 

■2005年12月末

1万6,111円(買付総額:70万円/評価額:約99万6,000円)

……評価額が約100万円となり、買付総額の70万円を約30万円上回る。

 

■2006年12月末

1万7,225円(買付総額:82万円/評価額:約119万2,000円)

……評価額が約120万円となり、買付総額の82万円を約38万円上回る。この時点での平均利回りは約11%になる。

 

■2007年8月末

1万6,569円(買付総額:90万円/評価額:約122万2,000円)

……フランスのBNPパリバ銀行が傘下の3つのファンドの凍結。サブプライムローン問題の表面化。ドル・コスト平均法での運用も苦戦が始まる。

 

■2008年10月末

8,576円(買付総額:104万円/評価額:約72万2,000円)

……リーマンショック勃発。日経平均株価は10月28日、バブル崩壊以降の最安値を更新する6,994.90円を付ける。世界経済は低迷期に突入する。評価額は約72万円に値下がりし、買付総額の104万円を30%以上下回る。元の木阿弥となる。

 

■2011年3月末

9,755円(買付総額:133万円/評価額:約111万8,000円)

……3月11日、東日本大震災発生。東北地方を中心に甚大な被害。低迷を続けていた株価に、さらに暗雲が垂れ込める。評価額は約112万円と、依然元本割れの状況。

 

■2012年10月末

8,928円(買付総額:152万円/評価額:約120万9,000円)

……アベノミクス直前。依然として投資元本を割り込む。

 

■2013年2月末

1万1,559円(買付総額:156万円/評価額:約160万9,000円)

……アベノミクス開始4ヵ月あまりで投資元本を回復。成長路線に突入。

 

■2019年12月末

2万3,656円(買付総額:238万円/評価額:約435万7,000円)

……コロナショック直前。約20年間の平均利回りは約6%/年となる。

 

■2020年3月末

1万8,917円(買付総額:241万円/評価額:約351万1,000円)

……新型コロナウイルスのパンデミック宣言。世界中の株価が暴落。しかし、評価額は約351万円と買付総額の241万円を110万円上回る。

 

出所:日本経済新聞にて公開された日経平均株価の数値をもとに著者作成
[図表]ドル・コスト平均法の結果 出所:日本経済新聞にて公開された日経平均株価の数値をもとに著者作成