世界一富裕層が集まる場所として知られているドバイですが、その生活は安月給で働く出稼ぎ労働者に支えられています。本記事では、30歳目前でサラリーマン生活に終止符を打ち、現在は世界を旅しながら2児を育てる森翔吾氏の著書『すべては「旅」からはじまった 世界を回って辿り着いた豊かなローコストライフ』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編して、華やかなイメージに彩られたドバイの知られざる実態をご紹介します。
人口の9割は出稼ぎ労働者、1日12時間・週6日働いても月給は15万円程度…世界の富裕層が集まる「ドバイ」の知られざる裏側
出稼ぎ労働者が報われる日は来るのか
ただし、ドバイは格差社会。ドバイの人口の10%程度を占める現地で生まれた大金持ちや白人富裕層は南側に住み、人口の90%を占めるインド、パキスタン、フィリピン、エジプト、アフリカなどからの出稼ぎ労働者は北側に住んでいる。
出稼ぎ労働者でも、出世しやすいのは白人(ロシア、ウクライナを含む)と言われており、お金がないから、生活が苦しいからといって、薬物犯罪や暴力犯罪を犯したら、即刻国外退去。二度とドバイに入国できないというルールがある。だから、犯罪が少ない。なかなか合理的な考え方だ。
2024年の年末、僕たち家族が住むロシアのカザンが、無人機による攻撃を受けた。火災や停電が起こり、外出が危険な状態になったため、ドバイのホテルに緊急避難した。2週間ほどの滞在だったが、そのときに利用したタクシーのドライバーも、出稼ぎに来ているパキスタン人だった。
一日12時間、週6日働いて、給料はようやく1000ドル、日本円で15万円程度。基本給は5万円程度の歩合制なので、走り続けなければ給料は上がらない。
10畳ほどの部屋に2段ベッドが16個というぎゅうぎゅう詰めの部屋で寝泊まりし、家賃3万円。食費に2万円。残りの10万円は、本国の家族をサポートするために仕送りをしている。それでも、「パキスタンには仕事がないから、ドバイで仕事ができるのはありがたい」と彼は言っていた。
語学留学していたフィリピンでも、同じような話を聞いた。あれからもう10年近く経つというのに、出稼ぎ労働者たちの生活は依然として厳しい。彼らの努力と苦労が報われることを祈るばかりだ。
妻も出稼ぎ経験者だったからこそ、強くそう感じる。
森 翔吾