性格が合わない、価値観が違うなど、離婚に至る理由はさまざまありますが、最近では「女性側の異性関係」が理由となるケースも少なくないようです。とある夫婦の事例をもとに、熟年離婚の実態と現実をみていきましょう。山﨑裕佳子CFPが解説します。※個人の特定を避けるため、登場人物等の情報は一部変更しています。
後悔しています…“娘よりも年下の男性”と不倫→夫に「離婚」を懇願した年収100万円・48歳パート妻の末路【CFPが警鐘】
仁美さんのその後
約半年の治療の末、仁美さんは職場に復帰することができました。現在は定期検診を受けながら介護施設のマネージャーとして働き、親の援助なしで生活できています。
こうして、仁美さんが離婚して5年が経ちました。
「もし、実家に金銭的な余裕がなかったらと思うとゾッとします。いまごろ生きていられなかったでしょうから……」
仁美さんは「両親には感謝してもしきれない」としみじみ語ります。そのうえで、
「身体のことを考えるといつまで働けるかわかりません。今さら言っても後の祭りですが、財産分与と年金分割の請求をすれば良かったと後悔しています」
と、感情的に離婚してしまったことを後悔している様子でした。
というのも、先日FP資格を持つ友人に事の顛末を話したところ、財産分与と年金分割の権利があったことを知ったのです。
財産分与と年金分割
離婚の原因が自分側にある場合、財産分与の請求はできないのでは? と思うかもしれません。しかし原則、婚姻期間中に築いた財産は分与の対象です。とはいえ、感情論で相手側が納得しない気持ちもわかります。
洋祐さんは、仁美さんから財産分与の請求がなかったため、一切分与しませんでした。しかし本来であれば、仁美さんには財産分与を請求をする権利があったのです。
洋祐さんが納得できないなら、仁美さんが分与された財産から洋祐さんに慰謝料を支払うという形にすることもできたでしょう。
また仁美さんは、夫の年金を分割してもらえることも知らなかったため、手続きをしていません。
年金分割には「合意分割」と「3号分割」があります。この「3号分割」であれば、同意なく相手の厚生年金記録の半分を、自分の年金記録に移すことができるのです(※)。
(※)2008年4月1日以降の婚姻期間中の第3号被保険者期間分
「知らなかった」はもったいない
離婚する理由は千差万別、いまや3組に1組の夫婦が離婚する時代です。
今回紹介したケースは不倫が原因でしたが、離婚を選ぶ夫婦にはさまざまな事情があるでしょう。そんなとき感情的になるのではなく、こうした制度を把握したうえで、冷静に判断することをおすすめします。
山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表