高齢の親をもつ40~50代に多いのが「親の心配」の悩みでしょう。親が70代後半から80代に差しかかると、ケガや病気による介護はもちろん、相続をはじめとした「万が一の場合」への備えなど、悩みは尽きません。なかには「親のために同居してあげたほうが良いのでは」と考える人もいるのではないでしょうか。しかし、“子との同居を喜ぶ親ばかりではない”点には注意が必要です。息子からの同居の提案を“頑なに拒む”80歳女性の例を紹介します。
母さんは大丈夫だから…年金月7万円の80歳女性、55歳長男の「同居の提案」を“頑なに拒む”まさかの理由
幸恵さんが同居を拒む「最大の理由」
幸恵さんが同居を頑なに拒むのは、ずばり「長男の妻との関係」が原因でした。
明確に「どちらが悪い」というわけではありません。しかし、長年の小さな価値観の違いが積み重なった結果、幸恵さんは「息子が愛した相手をこれ以上嫌いになりたくない」と、距離を置いた関係を選んだのでした。
しかし、そんなことを愛する息子に言えるはずもなく、幸恵さんは「質素でも、自分のペースで暮らしたいのよ。とにかく私のことは心配いらないから」と話を切り上げます。
「せっかく自分が心配してやっているのに……」と納得のいかない一郎さん。しかし、いくら説得しても暖簾に腕押しで、母・幸恵さんの心は一向に動きませんでした。
幸恵さん・一郎さん親子に潜む“思わぬリスク”
幸恵さんのように「子どもに頼らず、自分のお金で暮らす」という選択は決して悪いものではありません。「子どもに迷惑をかけている」といった気持ちから相手に気を遣ったり、罪悪感を抱いたりすることなく、自由を満喫できます。
しかし、ここで注意しておきたいのが「相続」の問題です。
息子に知らせていない4,000万円の存在は、幸恵さんの死後に相続の場で明らかになるでしょう。
もしも一郎さんに兄弟がいれば「母が隠していた財産があったのか」と驚き、分配を巡ってトラブルになる可能性があります。
まとまった金額や不動産があれば兄弟間で「取り分」をめぐる争いが起こりやすくなります。へそくりは自分の老後のために積み立てたものでも相続段階で“争族”の火種になってしまうことは珍しくありません。
争族を防ぐためにできること
幸恵さんのようなケースでは、次の3つの対策が有効です。
1.財産の見える化……エンディングノートや財産一覧を作って子どもに存在を知らせておく。
2.遺言書の作成……「誰にどのように分けるか」を明確に残しておけばトラブル防止に有効。
3.専門家への相談……第三者の専門家を活用しながら、相続税や分配方法を事前に検討する。
幸恵さんのように「家族に迷惑をかけたくない」と思う人ほど、元気なうちに準備しておきましょう。