「自分はまだ年寄りじゃない」…そう思っていても老いは確実にやってくる。シニア世代の勢古浩爾氏(執筆当時77歳)が自らの経験を基に語る、現代の老人に対する考察とは? 著書『おれは老人? 平成・令和の“新じいさん”出現!』(清流出版)の一部を抜粋・再編集してご紹介しよう。
ズボンを穿き替えてふらふら、歩いてふらふら
ふだん気に入らないのは、服を着替えるたびに、ふらつくことだ。出かけるときや風呂から出たとき、着替える。そんなとき、かならず片足立ちになるのだが、これがふらつくのである。後ろか、左右どっちかに傾く。だから、どこかに手をついて支えるようになった。
これが老年による体幹の弱まりによるものか、平衡感覚の衰えによるものかよくわからないが、とにかくできないことが不快である。もう自分の体が、意に反して勝手に動いてしまうのだ。なに、倒れてるんだよと思う。
検査したわけではないが、骨粗鬆症も心配である。骨が脆いのではないかと思うが、いずれにせよ体の芯がしっかりしてない。おそらく、歩くときにふらつくことと関係しているはずである。
このふらつきはあきらかに脳梗塞の後遺症だと思うのだが、因果関係はわからない。ほかの七十代のご同輩、そんなことはありませんか。それとも、わたしだけなのか。
そのほか、70歳以前にはなかったことが生じている。どうしてこんなことになるのかわからないが、顔が痒いのである。額とか頬とか眉の横のところとかが痒くなり、なんだこれは、と思いながら指で掻く。かなり頻繁に生じるが、こんなことは以前まったくなかった。
なかでも腹立たしいのは、目が痒いことだ。この痒みは、端的には、白内障の手術をしてから始まった。炎症かなにかなのだろうが、眼医者には行っていない。どうせ目薬を処方されて終わりだろうと思うと、行く気がしないのだ。まったくわけのわからない症状が出るものだ。
目尻も痒くなるが、より多く目頭が痒くなる。左目に多い。ほぼ毎日である。そのうち目玉が痒くなるんじゃないか、さすがにそれはないか、と思っていたら、目玉は痒くないが、瞼のなかが痒くなったのである。
時々、鼻の穴や耳の穴の奥が猛烈に痒くなったりもする。こんなことがあるんだ? まるで因果関係がわからない。そのままほったらかしである。老化とは関係がなさそうである。皮膚科にも行っていない。
「顔がかゆい」で検索しても、化粧品や花粉が皮膚に触れるとそれが刺激となって云々、とか乾燥がどうしたとか、つまらんことしか書いていない。掻くのはNGとあるが、掻くしかない。いちいち薬など塗っていられるか。なかには親切めかしたことが書かれており、読んでいくと、結局は治療薬の宣伝だったりするので腹が立つのである。いちいち不快である。
しかしこのまま、なんとかやりすごすしかない。
勢古 浩爾