誰にでもある、実年齢と本人の意識のギャップ。 じつは、「今のおじいさんは、自分を老人とは思っていない」のだ――。自らもシニア世代の勢古浩爾氏(執筆当時77歳)の現代の老人に対する考察とは? 著書『おれは老人? 平成・令和の“新じいさん”出現!』(清流出版)の一部を抜粋・再編集してご紹介しよう。
ユニクロ老人とレオン老人
わたしが考える、現代のじいさんの典型的な姿はこれである。
キャップをかぶり、シャツを外にだらしなく垂らし(だらしない、という言葉は死んだ?)、半ズボンにスニーカーを履いている。加えて、リュックを背負うか(しかしリュック派は意外と少ない)、肩からポシェットかバッグを下げるか、ボディバッグかウエストバッグを装着している。これで、現代じいさんのでき上がりである。
バリエーションはいろいろある。キャップも野球帽か簡素なもの、シャツもTシャツか、柄シャツか、ポロシャツか、さまざま。ふつうのズボンやジーパンもある。スニーカーもブランドものから、廉価なものまで。こちらは、ユニクロ派かワークマン派だといっていい。
その多くの老人は、いまはこうよ、と家族に勧められたか、そうかいまはこれが流行っているのかと、自分の趣味趣向を取り入れたかのじいさんスタイルである。この質とスタイルが典型的だといっていい。
恥ずかしながら、これはわたし自身の姿でもある。服装に金をかけるのは、根本的にばかばかしい、と思っている。基本的にユニクロかワークマンで十分である。ただそのなかでも好みがあって、わたしが好きなのは柄も色もシンプルなものだ。それならとくに文句はない。
ところがなかには、おれは一味違うぞと、髪の先からつま先まで、高価なもので決めまくり、カッコいいじいさん、イケてるじいさんを意識している連中がいる。こちらは、いわばレオン派である。
ジローラモが表紙の雑誌『LEON』を読んでいるかどうかは知らないが、カッコつけているじいさんをとりあえずレオン派と呼んでおく。もちろん、少数である。わたしはこの一派をよく知らないから、服装の特徴を詳しくいうことができない。それでパス。
これより、もっと少数派がいる。ヒップホップじいさんだ。これはひとり見かけた。ごついヘッドセットを着け、でかいスニーカーを履いている。やめればいいのに。
何派でもいいが(ほとんどはユニクロ老人)、こんな格好のじいさん、昔のじいさんとおなじなわけがないのである。現代の老人たちの多くは、いってみれば団塊老人である。内面の価値観もまるっきり変わってしまったようである。