「A5ランク」と聞けば「とんでもなく美味しいお肉に違いない!」と、私たちは反射的に思ってしまいます。しかし、この「A5ランク」という表記は美味しさの基準ではないという事実をご存じでしょうか。本記事では、2005年に本格的に焼肉にハマって以来、年間100店舗以上もの焼肉店を巡るだけでなく、生産現場にまで足を運び、牛や餌に関する知見を深め、肉の焼き方や部位の特性を独自に研究・分析する焼肉作家、小関尚紀氏の著書『知ればもっと美味しくなる!大人の「牛肉」教養』(三笠書房)より一部を抜粋・再編集して、「A5ランク」の真意について解説します。
人によっては「A3のほうが好み」
ここまで見てきたように、A5ランクなどの牛肉の格付けには、枝肉から取れる部分肉の量を測定した「歩留まり等級」(アルファベット)と、霜降りの度合いなどを見た目で判断する「肉質等級」(数字)しか反映されていません。
そのため、味のよし悪しはまったく関係ないのです。「C」だから、「2」だからといって、その肉の質が悪いということにはなりません。
「A5ランク」とは「1頭の牛から取れる肉の量が多く、霜降りが美しくて見た目がいい肉」という意味です。脂身が苦手な方であれば、A5ランクよりも、A3ランクやA2ランクの赤身が多い肉のほうが、口に合うこともあるでしょう。
「A5ランクだから美味しいに決まっている」という信仰に振り回されることなく、この格付けの意味を理解した上で、ぜひ自分の好みに合った牛肉を見つけてみてください。
格付けは「効率性」と「見た目」の評価にすぎません。「A5ランク信仰」から解放されましょう。A5ランクは霜降りが多くて美しい、くらいに覚えておくのが賢明です。
小関尚紀