人によっては「A3のほうが好み」

ここまで見てきたように、A5ランクなどの牛肉の格付けには、枝肉から取れる部分肉の量を測定した「歩留まり等級」(アルファベット)と、霜降りの度合いなどを見た目で判断する「肉質等級」(数字)しか反映されていません。

そのため、味のよし悪しはまったく関係ないのです。「C」だから、「2」だからといって、その肉の質が悪いということにはなりません。

「A5ランク」とは「1頭の牛から取れる肉の量が多く、霜降りが美しくて見た目がいい肉」という意味です。脂身が苦手な方であれば、A5ランクよりも、A3ランクやA2ランクの赤身が多い肉のほうが、口に合うこともあるでしょう。

「A5ランクだから美味しいに決まっている」という信仰に振り回されることなく、この格付けの意味を理解した上で、ぜひ自分の好みに合った牛肉を見つけてみてください。

格付けは「効率性」と「見た目」の評価にすぎません。「A5ランク信仰」から解放されましょう。A5ランクは霜降りが多くて美しい、くらいに覚えておくのが賢明です。


小関尚紀