牛はタイパもコスパも悪い

最後に牛です。

ここでは肥育期間が標準的な和牛を取り上げます。和牛の妊娠期間は約280日で、1回の分娩では1頭しか生まれません。

そして、ここからが長い!

生まれた子牛は、まず繁殖農家で8カ月~9カ月飼育された後、子牛市場に出荷されて肥育農家に購入されます。その肥育農家で、なんと約20カ月肥育されてから、ようやく出荷されるのです。

飼料の量は1㎏増やすために、8㎏~10㎏も必要になります。

[図表]鶏・豚・牛の生産サイクル

上の図を見ていただくと、鶏、豚、牛のそれぞれの出生~出荷までの日数は、体の大きさに比例して長くなっていることがわかります。つまり、牛は、肥育にかかる時間とコストが群を抜いているため、ほかの肉と比べて高価になっているのです。

ちなみに、和牛の場合、肥育期間が長期になればなるほど、肉の旨味が増し、脂が溶けやすくてなめらかな舌触りになると言われています。

しかし、当然ながら、長期になるとケガや病気になって死亡するリスクも高まります。そのため、時間をかけて大切に育てられた牛は、より高価になるわけです。

さらに、牛は鶏や豚と比べると、1頭あたりから取れる可食部分の割合が少なく、これも牛肉の価格が高くなる一因になっています。

牛の飼育は、鶏や豚と比べて、莫大な時間とコストがかかる。牛肉はたしかに高い……。ですが、タイパやコスパを考えればそれも当然なのです。

小関尚紀