50代は、人生の終盤戦ではありません。それは、あらゆる役割から解放され、初めて「自分のためだけの時間」を生きる、第二の人生のスタートラインかもしれません。本記事では、『自由で、明るく笑って過ごす スペイン流 贅沢な暮らし』(大和出版)より、53歳で単身スペインに渡り、学生としてゼロから人生を再構築した著者Rita氏の留学のスタートラインをご紹介します。
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最大の壁
最も大きな壁だったのが「語学力なし」です。
英語にすら人一倍苦手意識があった私にとって、「真新しい言語を習得する」という決断は、まさに無謀とも言える挑戦でした。実際にスペインの語学学校の受付で「英語とスペイン語、どちらで説明するのがいい?」と尋ねられ、どちらもできない私は「NO」としか答えられませんでした。
でも「絶対成功してやる!」という強い意気込みはなく、「もしダメなら帰ってくればいいじゃないか」という、どこかふわっとした気持ちを大切にしていました。たとえ日本で再就職し、環境や給与が変わっても、この経験を持てた自分のほうがいい。そう思えたからです。
若い世代とは違う留学、久しぶりすぎる勉学、健康面の不安。以前に行ったスペイン、そして、あたたかくて優しいスペインだからこそ、決して意気込みすぎず、「違う国でひとりで生きてみる」というシンプルな目標を胸に、私はゼロからのスタートを切ったのです。
何が待っているかもわからず、見通しなんて立たないままの出発でしたが、だからこそ、「失うものは何もない」という軽やかさもありました。これまでの肩書きや役割を脱ぎ捨てた自分が、ただひとりの「私」としてどう生きていけるのか。それを確かめたい気持ちが、背中を押してくれていました。
Rita