現役時代に高所得だった人が、引退後も生活水準を落とせずに苦労するケースは少なくありません。一方、そんな状況でも“第二の人生”を楽しむ人もいます。老後に必要な資金の準備とセカンドキャリアの考え方について、元銀行員の事例をもとにみていきましょう。牧野寿和CFPが解説します。※個人の特定を避けるため、登場人物の情報等は一部変更しています。
し、支店長!?…銀行で支店長を務めた64歳男性、ガソリンスタンドに再就職→汗だくで洗車する姿に元部下はあ然も、本人は「悪くない」と満足気のワケ【CFPの助言】
Aさんが「ガソリンスタンドへの再就職」を決心したワケ
その後夫婦で無駄な支出を削減するため、家計支出の見直しをした結果、自慢の高級セダンを売却することに。
Aさんは「最後だから」と、愛車の手洗い洗車を始めました。すると、初めて自分の中古車を購入した当時、休みのたびに無心で車をきれいにしていた感覚がよみがえってきました。
「楽しい……これだ!」
そして、Aさんは出向先を60歳で退職すると、すぐにガソリンスタンドを経営する会社に再就職しました。最初は慣れない業務に戸惑いましたが、年齢や風貌からの信頼感もあり、次第に従業員や顧客からも親しまれるようになったのです。
し、支店長!?…元部下が驚いたAさんの姿
そんなある日、元部下が営業車でそのガソリンスタンドに給油に立ち寄りました。汗だくで洗車する元支店長の姿を見て「し、支店長!?」と驚きます。
当の本人はいたって冷静で「悪くないよこの仕事。体を動かすから運動になって健康にもいいし、なにより飯が美味い」と満足気。
「ありがとうございました、お気をつけて!」
満面の笑みで元部下を送り出したAさんは、元支店長という余計なプライドは微塵も残っていない、ガソリンスタンドの従業員に変身していたのです。
人生100年時代…65歳以上の就業者数および就業率は上昇傾向
セカンドキャリアとしてガソリンスタンドを選んだAさんは、60歳で再就職してから、かれこれ4年間働いています。また、Aさんは「体が動く限りは続けたい」と、このまま70歳まで働くことにも前向きです。
内閣府「令和7年版高齢社会白書(概要版)」によると、図表のように「65~69歳」の就業者数は390万人、年齢層の人口に占める割合は53.6%と、半数以上の方が働いています。
もしもAさんがあのまま60歳で完全リタイアしていた場合、65歳までの5年間は家計収入が途絶えていました。さらにAさんは国民健康保険料を、Bさんも国民健康保険料と国民年金保険料(60歳まで)も納付するため、家計はかなり苦しくなっていたことでしょう。
![[図表]高齢者の年齢階級別、就業者数及び就業率の推移 出所:内閣府「令和7年版高齢社会白書(概要版)」より引用](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/b/0/540mw/img_b08481192000b77311edf3f430aef43962159.jpg)