深刻化する8050問題~就職氷河期世代を抱える親の現実

松本夫妻のような状況は「8050問題」と呼ばれる、全国で深刻化している社会問題の一例です。80代に近い親が50歳前後の子どもを支えなければならない状況を指しています。

この問題の背景には、就職氷河期世代の存在も関わっています。現在41~55歳にあたるこの世代は1,700万人以上が該当し、1993年から2005年頃の厳しい就職難を経験しました。バブル崩壊後の不況で企業の採用が極端に絞られ、優秀な人材でも正社員として就職できない状況が続いたのです。

就職氷河期世代の不本意非正規雇用の割合(2018年)は14.1%で、全体平均の12.8%を上回っています。不本意非正規雇用とは「正社員で働きたいけれども、正規の仕事がないから」という理由で、やむなく非正規雇用で働いている状況です。一度つまずくと正社員への道は険しく、非正規雇用を転々とするうちに年齢を重ね、ますます就職が困難になるという悪循環に陥っているのです。

このような苦境に立つ氷河期世代の子を持つ親の多くは、立ち直りを期待してできるだけ援助したいと考えます。しかし、年金生活者の親が40代で無職の子どもを抱えてしまうと、家計は大幅な赤字になるでしょう。

松本夫妻のように4,000万円の貯蓄があっても、いずれ底をついてしまいます。さらに、健一さんのように慢性疾患がある場合、継続的な治療費がかかり、将来的な介護費用も視野に入れる必要があります。

徹さんが実家に戻って衣食住が保証されたために、自立への切迫感が薄れてしまうのも大きな問題です。親の援助に甘え、実家にこもりがちになると、ますます就職が困難になります。だからといって、徹さんを両親が突き放せば、却って問題が悪化してしまうでしょう。

両親の健康リスクも高まる状態では、徹さんの一日も早い自立が求められます。そのためには、どんな対策が考えられるでしょうか。