不動産価格が高止まりしている昨今、マイホームを手に入れる手段として、共働き世帯による「ペアローン」の利用が増えています。ただ、ペアローンは“もしものとき”の補償の範囲や、手数料の割高さといったデメリットが懸念されることも。そこで、マイホームを検討する共働き世帯に知っておいてほしいのが、「夫婦連生団信」です。本制度の特徴やメリット・デメリットについて、株式会社FAMOREの山原美起子CFPが具体的な事例を交えて紹介します。
東京に家が欲しい…世帯年収1,000万円の30代共働き夫婦が〈夫婦連生団信〉に見出した希望【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

夫婦共働き世帯におすすめの「夫婦連生団信」

 

これらを踏まえ、近年注目が集まっているのが「夫婦連生団信」です。

 

夫婦のどちらか一方が死亡したり、所定の高度障害になったりした場合、通常の団信では、支払い対象となった人の住宅ローン残債のみが0円になります。ところが、夫婦連生団信は住宅の持分や返済額にかかわらず、残りの住宅ローンが0円になるのです。

 

夫婦連生団信の主なメリットは、下記の4つです。

 

1.単身での申込より借入可能額が増える

2.夫婦ともに住宅ローン控除を利用できる

3.夫婦ともに団信に加入できる

4.夫婦のどちらかに万が一(死亡、高度障害)のことがあれば住宅ローンがなくなる

 

また、夫婦連生団信であれば、住宅ローン控除を夫婦それぞれが享受できます。

 

年収がそれほど高くない自分が遺された場合のローン返済に不安を感じていた加奈さんでしたが、仮に翔平さんが先に亡くなっても返済に困ることなく、マイホームに住み続けることができます。この安心感は、なにより心強いサポートといえるでしょう。

 

なお、住宅ローンに夫婦連生団信を付保する場合、「連帯債務型ローン」に限られることが一般的です。保障期間はローンの返済期間と連動しているため、完済した時点で終了します。

 

また、加入にあたって、保険会社による審査があります。そのため、すべての人が加入できるわけではありません。

 

所得税や住民税が高額になる可能性も…

夫婦連生団信には多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。それは、返済を免除された分が「一時所得」とみなされ、所得税や住民税が高額になる可能性がある点です。

 

住宅ローンが完済となることから、税金を払えない事態に陥るケースは少ないと思われますが、対応できるだけの現金を準備しておくと安心です。

 

また、夫婦連生団信を使うには、各金融機関によって異なりますが、通常の適用金利に年0.1%〜0.3%程度の金利を上乗せする必要があります。

 

ただ、団信は一般的な生命保険に比べて保障内容が簡潔な分、保険料が割安に設定されていることが多いです。そのため、金利上乗せがあるとしても夫婦連生団信を使うことで他の生命保険料が不要になり、結果的に節約となる可能性もあります。

 

夫婦連生団信を検討する際には、金利上乗せによる月々の増額分と、似たような保障を付ける場合の保険料を比較してみるとよいでしょう。

 

都内にマイホームを…新たな夢に向け、1歩を踏み出した夫婦

東京に念願のマイホームを持てる可能性があることがわかり、2人の表情はパッと明るくなりました。

 

「産休・育休を取る予定もないので、世帯年収を上げながら定年までしっかり働いて、夫婦で一緒にローンを返済していこうと思います」と、翔平さんはこれからの暮らしに前向きです。

 

とはいえ、夫婦で融資を受けることは、夫婦それぞれの安定した収入が前提です。そのため、さまざまな理由でどちらか片方の収入が減るようなことがあれば、返済が難しくなるでしょう。

 

今回見てきたように、借入時に金融機関が提示する借入可能額は実際の返済可能額と必ずしも一致しません。万が一の保障や税金面の違いなどについてもよく理解したうえで、物件選びと同じ熱量で後悔のない「住宅ローン選び」をしたいところです。

 

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

 

 

山原 美起子

株式会社FAMORE

ファイナンシャル・プランナー(CFP/1級ファイナンシャル・プランニング技能士)