思いがけず手にした莫大な財産。夢のような生活が送れると思ったものの、事態は思わぬ方向に……。今回は2億円もの財産を手にしながら数年で全財産を失い、まさかの転落人生となった事例について、ファイナンシャルプランナーの小川洋平氏が解説します。
なんてことだ…55歳“平凡会社員”が1本の電話で手にした「2億円」。夢の生活を送るも、たった7年で「自己破産」に転落のワケ【CFPの助言】
相続で「まさかの大金」を手にした大川さん
大川明正さん(仮名・62歳)は、首都圏近郊に妻と二人で暮らし、中堅企業に勤めるごく普通の会社員でした。そんな大川さんに思いがけない連絡が入ったのは7年前、55歳のときのことです。
40年以上前に亡くなった伯父が都内に所有していた土地付き一戸建てが、名義変更されないまま伯父の内縁の妻によって住み続けられていたことが判明。その内縁の妻が亡くなり、税金が滞納されていたことをきっかけに、唯一の法定相続人である大川さんの元に連絡が入ったのです。
その土地は駅から徒歩5分という好立地にあり、土地は70坪ほど。未払い分の固定資産税や滞納されていた税金、相続税を差し引いても、売却後には約2億円もの現金が手元に残りました。
長年会社員として真面目に働いてきた大川さんにとって、まさに夢のような出来事でした。「これだけあれば老後は余裕だろう」と、55歳で仕事も退職。2億円もの資産を手に入れて、晴れて第二の人生に突入しました。
憧れの高級外車オーナーに…夢の生活がスタート
自由とお金を手に入れた大川さんは、長年の夢だった高級外車を購入。車両価格約2,000万円。そこから、同じ車のオーナーが集まるサークルに参加し、月に1回以上あるオフ会やツーリングに出かけるようになりました。
各地の別荘に泊まるイベントや、大きなサーキットで行われる走行会、仲間との会食……。集まるのは高級車オーナーだけあって、富裕層がほとんど。見劣りしないよう、大川さんは自分の身なりに投資をするようになりました。
洋服や腕時計、ブランドのバッグまで買い揃え、気づけば毎月の支出は100万円を軽く突破。さらに、妻も大川さんの羽振りの良さに影響されて散財をするようになったのです。
「2億円もあるんだから、多少使っても減らない」
そう考えていた大川さんでしたが、贅沢な暮らしは確実に預金を蝕んでいきました。日々の支出がエスカレートしていった結果、5年が経過したころ、預金残高はついに2,000万円を切ってしまったのです。