(※写真はイメージです/PIXTA)
「僕が大人になったらママが悲しむ」
15年、「尾木ママ」こと法政大学の尾木直樹名誉教授(教育評論家)は、『親子共依存』(ポプラ新書)を出版し、仲が良すぎて子の自立を妨げる親子関係の危うさに警鐘を鳴らすとともに、「中学2年生の男子(当時)の2割が、いまだに母親と一緒にお風呂に入っている」とのデータを提示しました。
私自身も、「草食系男子」に関する拙著の出版(08年)を機に、同じく「ママとお風呂」に入る男子をたびたびマスコミで紹介しました。もっとも、当初は「中学生の男子が、なぜ母親とお風呂に入るのだろう」と不思議だったのも事実です。
そこで取材中、「恥ずかしくない?」と聞くと、彼らの何人かはこう口にしたのです。
「恥ずかしいとか、関係ない。お風呂で喋るとお母さん、めっちゃ笑顔になってくれるし」
「ママの裸? なんとも思わないですよ。それに万が一、下半身が反応したりしたら、『(僕が)ああ、大人になっちゃった』って、ママが悲しむじゃないですか」
そんな声を受けて、精神科医で医学博士の斎藤環氏は、私に教えてくれたのです。
「彼ら子どもたちは、親にただ甘えているのではない。親を喜ばせようとしたり、(親が悲しまないように)気をつかって甘えたりしているんです」
このころの中高生がまた、おもにゆとり世代とZ世代でしょう。
「パラサイト・シングル」が増えた理由
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一見すると、「仲良し」や「甘えすぎ」に見える、仲良し親子。ですがその背後には、複雑な人間関係が隠れています。同時に、彼ら自身のせいだけでなく、経済や社会に翻弄され、親子が密着せざるを得ないケースもあるのです。
それを象徴するキーワードが、「パラサイト・シングル」。中央大学・山田昌弘教授が、99年出版の著書(『パラサイト・シングルの時代』/ちくま新書)を通じて広めた言葉で、「大学卒業後もなお、親と同居を続ける独身(未婚)者」を指す言葉です。
当時(90年代後半)、「親に甘えている」「20代半ば〜後半を過ぎて、まだ実家に住み続けている」など揶揄されたのが、おもに団塊ジュニア、すなわちZ世代の親の一部でした。
80年時点で20~34歳の人口全体に占める「親同居未婚者」の割合は、男性で3割強(32.9%)、女性で3割弱(26.1%)でしたが、15年後の95年にはそれぞれ1割以上増え、男女共に4割を超えるように(男性44.2%/女性41.1%)。若年の未婚者(18〜34歳)だけに絞ると、当然ながらその割合はさらに多く、92年時点で未婚男性の6割強(62.8%)、未婚女性の8割弱(76.7%)が親と同居するようになっていたのです(16年総務省(西文彦)「親と同居の未婚者の最近の状況」ほか)。
私自身、04年から2年間かけて、Z世代の親世代にもあたる団塊ジュニアの娘と、さらにその親世代の「団塊世代(46〜51年生まれ/現74〜79歳)」にあたる母親の、200組・400人にインタビュー調査を繰り返しました。積水ハウスと弊社の2社で、団塊ジュニアのパラサイト女性と親が、共に暮らしやすい住まいを開発するのが目的でした。
同時にこのころ(04年)、ほかの企業とも海外のパラサイト事情を調べ始めたのですが……、そのとき、日本だけでなく海外でもパラサイトが増える背景には、若者を巡る厳しい経済事情や社会環境があることを知ったのです。