近年、配偶者が亡くなったあとに「死後離婚」を選択する人が増えているそうです。「離婚」と聞くとネガティブなイメージを持ってしまいがちですが、亡くなった配偶者を愛していても、“あえて”離婚を選ぶという人も。いったいなぜなのでしょうか。多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士・CFPが、「死後離婚」のしくみとメリット・デメリットについて、事例を交えて紹介します。
夫のことは愛していました。でも…元公務員の夫を亡くした59歳女性が「死後離婚」を決断したワケ【税理士兼CFPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

「死後離婚」のメリット・デメリット

 

死後離婚は、自分の意思だけで義理の親や兄弟姉妹との姻族関係を終わらせることができます。手続きそのものは簡単ですが、家族関係におよぼす影響が大きく、ときにはトラブルに発展するリスクもあるため、メリットとデメリットを比較してじっくりと検討することが大切です。

 

メリット1.義理の親の扶養や介護について心配する必要がなくなる

死後離婚をすれば、義理の親の扶養や介護の心配をする必要がなくなります。経済的に困っている義理の親から「生活費を入れてほしい」や「介護の面倒をしてほしい」などといった要求を受けにくくなります。

 

メリット2.義理の親との同居を解消できる

配偶者が亡くなる前から義理の親と同居していた場合は、死別したあとも同居を解消しづらいケースがよくあります。

 

しかし、死後離婚によって親族関係を終了させれば、義父母と同居する理由がなくなり、それをきっかけに義理の親との同居を解消しやすくなります。折り合いの悪い姻族がいる場合なども、付き合う必要がなくなります。

 

メリット3.お墓の管理をしなくてよくなる

夫婦が死別した場合、残された配偶者がお墓や仏壇などを管理することが一般的です。さらに法事を行うとなると、地域や家庭環境によっては大きな負担になることもあります。

 

死後離婚をすれば、お墓を管理する必要がなくなります。もちろん、自身の死後に義理の親と同じ墓に入る必要もありません。

 

デメリット1.義理の親に頼れなくなる

死後離婚をすると、義理の親の扶養や介護について心配する必要がなくなる一方で、困ったときに義理の親に頼ることもできなくなってしまいます。

 

姻族関係を一方的に断ち切った以上、子どもの学費や結婚費用などで支援を期待することもできません。同居を解消することとなった場合は、新たな住まいを探す必要も出てきます。

 

デメリット2.お墓の準備をしなければならない

死後離婚のメリットとして、お墓の管理をしなくてよくなることをご紹介しましたが、その反面、自分が亡くなったあとのお墓や埋葬場所については自らが準備しなければなりません。

 

デメリット3.自分の子どもとの関係が悪くなる場合がある

夫婦に子どもがいる場合、死後離婚によって自分の子どもとの関係が悪くなる場合があるそうです。義理の親との関係を断ち切りたいと思うのは大人の事情ですが、子どもの立場からすると「なぜ、亡くなったあとにわざわざ離婚するの? おじいちゃんやおばあちゃんとは、もう会えないの?」と不信感をもたれるかもしれません。

 

まとめ…決断は慎重に

死後離婚することによって、しがらみや慣習からは解放されることとなります。しかし、今回みてきたように死後離婚は子どもに対する影響もあり、手続き完了後は義父母からの支援を受けることができなくなります。

 

相続財産の調査の対応など、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性などもあるため、死後離婚を検討する場合は一度専門家に相談されることをおすすめします。

 

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

 

 

宮路 幸人

宮路幸人税理士事務所

税理士/CFP