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すまない…夫の口から語られた「衝撃の真実」
ある日の夜、食卓で正雄さんが重い口を開きました。
「『実は、この退職金から返さなければいけない借金があるんだ……』とのこと。数年前、職場の後輩に頼まれて『連帯保証人』になっていたそうなのです」
人の良い正雄さんは、「絶対に迷惑はかけない」という後輩の言葉を信じ、判を押してしまいました。しかし、その後輩の事業は失敗。夜逃げ同然に失踪し、多額の借金の返済義務が、すべて連帯保証人である正雄さんにのしかかってきたのです。
「これまで、自分の給料からなんとか返済を続けていたそうです。私に心配をかけたくなくて、ずっと一人で抱え込んでいたようでした。でも、もう隠し通せないと……」
借金の額、1,500万円。退職金の7割が消えてしまいます。
「嘘でしょ、お願いだから、嘘だと言って!」
そういうだけで精いっぱいだったと裕子さんは語ります。
連帯保証人は、通常の「保証人」とは異なり、非常に重い責任を負います。借金をした本人(主たる債務者)と、ほぼ同等の返済義務を負うことになるといっても過言ではありません。
通常の保証人には認められている、以下の3つの権利が、連帯保証人にはありません。
催告の抗弁権
貸主(債権者)から返済を求められた際に、「まずは借金をした本人に請求してください」と主張する権利
検索の抗弁権
「まずは借金をした本人の財産を差し押さえてください」と主張する権利
分別の利益
保証人が複数いる場合に、その人数で割った金額だけを返済すればよいという権利
これらの権利がないため、連帯保証人は貸主から返済を請求された場合、「本人に支払い能力があるかどうか」や「他に保証人がいるかどうか」に関わらず、請求された全額を返済しなければなりません。
今回の正雄さんのケースのように、主たる債務者が失踪してしまえば、貸主は当然のように連帯保証人へ返済を要求してきます。軽い気持ちで判を押したばかりに、人生設計が大きく狂ってしまうという、連帯保証人の恐ろしさを示す典型的な事例といえるでしょう。
思わぬ借金の返済に、老後の計画が一気に崩壊した田中さん夫婦。退職金を使うとともに、逃げた主たる債務者を探し出すため、専門家に依頼をしたところだといいます。
[参考資料]
厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』
生命保険文化センター『2022(令和4)年度 生活保障に関する調査』
法テラス『Q11: 連帯保証人には、どのような責任がありますか?』