60歳からの再出発―リスキリングで道を拓く

木暮さんのような60代のホワイトカラーの就業は確かに厳しい状況にあります。しかし一方で、社会全体では深刻な労働力不足が続いており、国は高齢者の就業を積極的に促進しようとしています。また、「リスキリング」も強力に推進しており、年齢制限のない支援策もあることから、これらを上手く活用すれば、必要なスキルを習得して再就職するチャンスは十分にあるでしょう。

木暮さんのような状況で最も有効な制度が「求職者支援制度」です。この制度は職業訓練と就職サポートがセットになっており、最長6ヵ月間の訓練期間中に新しいスキルを身につけながら、同時に就職活動を進められます。

職業訓練のコースは多岐にわたり、基本的なパソコンスキルから簿記、介護、Web制作まで幅広い分野から選択できます。収入や資産の要件を満たすと月10万円の給付金を受けられますが、木暮さんは対象外となるでしょう。給付金が受けられなくても訓練自体は無料で受講できます。

また、木暮さんのような退職者は対象外ですが、経産省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」のように、年齢制限なく講座を受講できる制度もあります。

リスキリング後の再就職でも、大幅な収入ダウンは避けられないでしょう。しかし、現実から目をそらして高望みをし続ければ、いつまで経っても無職で無収入の状態から抜け出せません。そうなれば、貯蓄も減る一方になってしまいます。

自分のスキルを冷静に見つめ直し、現実的なセカンドキャリアを描くことはとても大切です。やり方次第では新しいキャリアでのステップアップもできるでしょう。

技術スキルの習得も大切ですが、同じくらい重要なのが「人間力」です。現実を受け入れ、周囲と協調し、新しいことを学び続ける姿勢があれば、シニア世代でも活躍の場は見つかるでしょう。
 

松田聡子
 CFP®