令和に突入して7年。社会や価値観の変化に合わせて、言語表現も淘汰されてきました。しかし「死語」となった表現のなかにこそ、当時の風情を感じられるものです。本連載では、栗山圭介氏の著書『昭和が愛した言葉たち』(有隣堂)より、死語になってしまった昭和の言葉が持つ愛とユーモアをご紹介します。
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Z世代には通じない。「これにてドロンします」に隠された、昭和モーレツ社員の“粋”と“したたかさ”
ガビーン
驚くこと。ショックを受けたときの感嘆詞。
解説
起源は驚きのさまを表す「ガーン」。スポ根モノや青春モノの漫画で、登場人物の顔と同サイズで描かれることが多い。「ガーン」がシリアスな場面で用いられるのに対して、「ガビーン」はどこかユルさ、コミカルさを漂わせ、驚きはするがそれほど深刻ではないという意味合いになる。そのあたりを、作者は意図的に使い分けた。
「ガーン」はショックが大きいほど数が増え、徐々に文字が小さくなっていく山びこ的な残響感をもたらすが、「ガビーン」が連続することは稀である。連続させると、本来の意味である驚きやショックの意味合いが薄れ、コミカルな方向へ傾倒するからである。
このような言葉は多種あるが、そのどれもが劇画向きで、シリアス度が高い順に「ガーン」「ガビーン」「ちーん」「……」など。「ちーん」は言葉さえ出てこないさまで、「……」は固まって息をすることさえ忘れてしまい、登場人物の目も点になることが多い。
寒い風が胸の中に吹き抜ける「ひゅー」や胸に空洞が開いた様子を表す「ぽっかり」など、時々の心情に応じて使ってみるのも一興である。「ガーン」「ガビーン」を文字で表現する場合は語尾に「!」を付けるとより効果的。文字をひび割れや立体的な3D仕立てにすれば血の激流や逆流、呼吸の乱れがわかる。対して「ちーん」「……」はそのままにすることで、静かな驚きが保たれる。
具体的な用法例
A男「悪いけど、それ死語だよ」
B男「ガーン」
A男「それも」
B男「ガビーン」
A男「それも」
B男「……」
ひとくちメモ
「ズコーン」は、同じ驚きでも、心が蝕まれるほどではないときに使う。
現代の言い換え
ネットスラングのorz。