誰もが羨む「渋谷区の2億円戸建て暮らし」も、誰にも言えない“裏事情”

佐伯恵美子さん(仮名・72歳)は、渋谷区の高級住宅街にある推定2億円の戸建て住宅でひとり暮らしをしています。2年前に最愛の夫を亡くし、子どもたちは同じ都内で独立。それ以降は1人でこの家を守り続けていました。

恵美子さんはとてもお洒落で、出かけるときは必ずブランド物の服やバッグを身につけ、髪もネイルも常に整えています。また、家は招かれた人が驚くほどきれいに整理整頓され、高級菓子や紅茶でもてなしていました。

近所の友人と定期的にフレンチやイタリアンなどのコースランチや観劇を楽しみ、行きつけの百貨店でお気に入りの服やアクセサリーを衝動買い。「さすが開業医の奥様だった人ね」と、誰もが羨望の眼差しを向けていました。

しかし、その裏にある家計の実態を知る人は、恵美子さん自身を除けば誰1人としていませんでした。

資産家に見えるのに、実は慢性的な赤字生活

恵美子さんの夫は都内の病院に勤務し、他のクリニックなどでのアルバイトも含めて現役時代の年収は2,500万円を超えていました。しかし、高い収入に合わせるかのように支出も多く、夫婦2人での月の生活費はなんと130万円に達していました。

家政婦や外注の掃除サービス、外食や交際費、美容や衣服代も惜しまず使い、貯蓄はほとんどできていなかったのです。

こうした生活費の原資は、ほとんどが夫の収入でした。しかし、その収入源はリタイアとともに失われ、以降の生活費は年金から賄わなければならなくなりました。

受け取れる年金は夫婦合わせても月30万円に届くかどうか。それまでの1ヵ月分の生活費130万円には遠くおよびません。それでもなお、夫婦は生活スタイルを変えることができなかったのです。

さらに追い打ちをかけたのが、2年前の夫の急逝でした。遺されたのは、生命保険3,000万円のみ。恵美子さんの収入は自身の老齢年金と、遺族年金をあわせて月18万円程度です。

ところが、夫の食事代などがなくなった分、食費などの支出は減ったものの、恵美子さんは寂しさを埋めるために買い物などに一層お金をつぎ込むように。渋谷区の戸建てを維持するための固定資産税などもかさみます。そうして、あっという間に3,000万円を食い潰してしまったのです。

減り続ける貯金のことを誰にもいえなかった恵美子さん。しかし、手元のお金がほとんどなくなったことで、さすがの恵美子さんも追いつめられるように。ようやく長男の雅史さん(仮名・45歳)に助けを求め、自宅を売ることに。築50年とはいえ土地の評価は高く、売り出してすぐに2億円で売却が成立しました。

その後、恵美子さんは高齢者向けサービス付きマンションでひとり暮らしをすることに。生活費は長男が管理し、月40万円までに抑えることになりました。

一般的な老後の生活水準から考えれば贅沢ともいえる金額ですが、以前のようなブランド三昧・外食三昧はできなくなった恵美子さん。「以前は楽しかったのに」と不満を漏らしながら暮らしているといいます。