自由気ままにみえるAさんの悩み

Aさんの実家には、4歳年上の兄Bさん家族が住んでいます。兄弟の両親はすでに他界しており、Bさんは亡き母から「Aを頼むよ」と常々言われていました。

Bさんは、Aさんが退職金と貯めたお金でフェラーリを買って自由気ままに生きていると聞いても、周囲のように特別視せず「安全運転しろよ」とだけ言っていました。しかし、久々に実家に寄ってくれたAさんと話しているなかで、Aさんがもうすぐ70歳になるという事実に気づきました。

Bさんは時の流れの早さに驚くと同時に、もうすぐ70歳にもかかわらずいまだにフェラーリを運転しているAさんのことが心配になり、「車はいつまで乗るつもりだ?」と切り出します。

するとAさんは意外にも、次のような悩みを兄に打ち明けたのです。

■アパートの大家からアパートを取り壊すので、立ち退いてほしいといわれている。

■食事を作るのが苦手で、アパートの近くには気に入った飲食店がないためコンビニ弁当かカップ麺で過ごしており、その食生活に飽きてきた。

■最近車の運転もしんどくなるときがあるので、引越しを機にフェラーリは売却して、そのお金を今後の生活資金にしようかと思っているけど、足りるのか心配している。

それを聞いたBさんは、今後の生活を自分の知り合いのFPに相談するよう勧めたのでした。

「幸せでした」で終わらないために

「会社では新規事業を任され、退職後は憧れのフェラーリに思う存分乗れて、これまで私の人生に悔いはありません。ただ、もうすぐ70歳なのに終の棲家も決めていないし、現在の貯蓄で今後の生活は大丈夫なのかと心配になってきました」

FPのもとを訪れたAさんは率直な悩みを吐露します。

そんなAさんは、終の棲家として都内に中古分譲マンションを購入する。もしくは、テレビで観たことのある「サービス付き高齢者向け住宅」を実家の近くかつ交通の便がいい地域で見つけたいといいます。

先日フェラーリを査定してもらったところ、現在のコンディションであれば、人気の車種であることもあり、購入価格と同額程度で売却できるそうです。したがって、Aさんの資産はフェラーリの価値が貯蓄に変わるだけとなり、現在の資産額8,000万円に増減はありません。

この資産であれば、マンションはローンを組むことなく購入できます。サービス付き高齢者向け住宅なら、入居時の初期費用は貯蓄から、また毎月必要な費用や食費は、いままでのように年金で賄えるでしょう。