人生を「教育→仕事→老後」と大きく3つのステージに分けると、40代は「仕事」のちょうど真ん中あたり。業務の責任が重くなり忙しさに拍車がかかる人も増える一方で、結婚や子育て、住宅購入など、支出が多い時期でもあります。そこで「夫のみが働いている世帯」と「夫婦共働き世帯」の2つの事例をもとに、40代が資産形成で注意すべきポイントについて、ファイナンシャル・プランナーの三藤桂子さんが解説します。※本記事は、株式会社セゾンファンデックスが運営する『セゾンのくらし大研究』からの転載です。
みんなが「資産形成」をはじめたきっかけ…教育費に住宅ローン、お金が“湯水のように”減っていく40代の事例【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

親が40代→子どもは受験期…もっとも教育費のかかる時期

 

収支の多寡はあるものの、A家とB家の共通点として、教育費が家計をひっ迫する恐れがあるということが挙げられます。

 

公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、世帯年収に占める在学費用の割合は、平均約15%となっています。

※ 在学費用……学校教育費(授業料、通学費、教科書・教材費等)と、家庭教育費(学習塾・家庭教師の月謝、通信教育費、参考書等の購入費、習い事の費用等)を含む、子どもにかかる費用の合計。

 

世帯年収階層別にみると、「世帯年収800万円以上」では在学費用の負担割合が11.6%であるのに対し、「200万円以上400万円未満」の場合は26.7%と、年収の4分の1を占めます。このように、世帯年収が低くなるほど在学費用が占める割合は高くなっているのです。

 

解決策としては、2組に共通して、子どもが独立するまで(=教育費がかからなくなるまで)のリスクに備える必要があるでしょう。

 

夫のみが働いているA家の場合、Aさんに病気やケガなど万が一のことがあった場合、収入が途絶えてしまいます。

 

社会保険に加入しているため、公的制度で多少は保障されるところがあるかもしれませんが、子ども2人が私立学校に通うにはかなりの金額が不足するでしょう。

 

まずは子どもが独立するまでの教育費を計算し、必要な金額を可視化しておきたいところ。また、現状の収入が高いことから、リスクを洗い出したうえで、死亡や医療(介護)、就労保障など、加入している保険でカバーできているか確認すると良いでしょう。

 

さらに、賞与はなるべく貯蓄に回し、剰余資金は分散投資などを行うことで、中長期的に貯蓄を増やすことをおすすめしました。

 

一方、共働きのB家の場合、収入がゼロになる可能性は低いでしょう。とはいえ、夫婦のどちらかに万が一のことがあった場合を考え、それぞれ不足額の洗い出しが必要です。

 

Bさんは妻が扶養から外れたことに不安を感じていましたが、社会保険に加入するためケガや病気で働けなくなった場合には「傷病手当金」が支給されます。また、老後の備えという意味でも、厚生年金保険に加入することで老齢厚生年金が上乗せされます。

 

現状、貯蓄にまわせる金額は少ないかもしれませんが、リスクが少ない積立タイプの資産形成を行うなど、コツコツと無理なくできる方法を選ぶといいでしょう。

 

老後を見据えた資産形成として、「iDeCo」も視野に

出費の多い40代ですが、老後を見据えた資産形成手段として「iDeCo」は欠かせません。

 

iDeCoは掛金全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となり、運用益も非課税で再投資できます。家計に無理のない範囲で、少額からでも検討してみることをおすすめします。

子どもと自身の老後のために、長期的な視点で資産形成を

 

子どもに苦労させたくないという思いからお金をかけすぎた結果、家計がひっ迫している世帯は意外と多くあります。まずは家計にあった教育費の割合を把握したうえで、全体の支出を調整しましょう。

 

40代は、子育て中の方は子どもの受験や進学・留学、親の介護がある方も増えるなど、なにかとイベントの多い年代です。だからこそ将来を見通した収支計画が欠かせません。もっとも、定年退職まではまだ10年以上あります。そのため「長期的な目線」で少額でも老後に向けた資産形成を意識することが大切です。iDeCoやNISAなど非課税制度を上手く活用しながら無理のない範囲でお金を育てていきましょう。

 

 

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

 

 

三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

代表