低所得の年金受給者向けの福祉的な役割を果たす「年金生活者支援給付金」。所得要件を満たすと支給されるようになるものの、当初は受給対象ではなかった人も支給されるようになるケースがあります。69歳Aさんの事例をもとに、その理由と「年金生活者支援給付金」の仕組みをみていきましょう。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役の五十嵐義典CFPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
えっ、いいの?…年金月13万円の68歳女性、日本年金機構から届いた「薄緑色の封筒」に大喜び。“全員もらえる”わけではない「特別な給付金」の正体【CFPの助言】
年金に“応援”をプラス…「年金生活者支援給付金」の仕組み
「老齢年金生活者支援給付金※」は、65歳以上で老齢基礎年金を受給している人を対象とした給付金で、下記の2つの条件を満たすことで、10月分から翌年9月分まで支給されます。
※ ここでは、「補足的老齢年金生活者支援給付金」も含む。
①前年の年金収入とその他の所得の合計が「所得基準額」以下であること
②市町村民税が非課税であること
2024年10月分~2025年9月分の支給には、前年2023年の所得基準額を用います。2023年の所得基準額は約88.9万円(※1956年4月2日以降生まれの場合)です。
なお、これは「老齢基礎年金の満額相当+10万円」の額となり、毎年所得要件に基づいて支給の可否が判定され、1年間(10月分~翌年9月分)支給されるかどうかが決まることになっています。
Aさんにはこれまで、こうした「薄緑色の封筒」が届いたことはありません。Aさんに一定の収入があることから、これまでは支給対象外だったことがその理由です。しかし、給与収入がなくなって合計収入も減ったことから、新規に給付金の対象となったようです。
しかし……。
給与収入がなくなっても、要件の約88.9万円を上回るAさん
支給対象となったのですから、この請求書を提出すれば、Aさんは実際に支給されるはずです。
しかし、先述のように、給付金の所得要件は年金収入とその他の所得の合計が約88.9万円以下であること。Aさんは年金収入だけになったとしても、156万円あります。
「年金はこの支給額の要件を上回っているのに、いいのかしら?」
Aさんは疑問に思いました。