■登場人物

・クリスティン・ベンツ…投資調査会社モーニングスターの資産管理およびリタイア計画担当ディレクター
・マリア・ブルーノ…バンガード社の資産計画研究責任者

老後の資産管理を考える

クリスティン:あなたが所属するバンガード社はむかしから手数料を安く抑えてきました。だからあなたがコストだってコントロールできるとおっしゃっても、今さら驚くべきではないのかもしれません。ここからはリタイア生活で支払うことになるさまざまなコストと、それをコントロールする方法についてお話をうかがいます。

マリア:コストといえば投資にかかるコストがよく話題になりますね。むかしとちがって、今は世界的に分散されたポートフォリオを低コストで運用できるようになりました。投資がコモディティ化するのはよいことです。ただ投資以外にも注意すべきコストがあります。

リタイア生活においては税金を安く抑えることがとても大事です。節税しながら資産を取り崩す方法も学ばないといけません。リタイアに向けて準備中の人の多くは課税繰延口座に大きな額を入れています。課税繰延口座は拠出金が所得から控除されますが、分配金の受け取り、必要最低分配額による分配が始まると、引き出す金額すべてに所得税がかかります。

ポートフォリオからいつ、どのように支出するのかを戦略的に考えると、生涯払う税金をかなり減らすことができます。ただしなかなかややこしいので、プロの助けを借りるのもよいでしょう。

将来、管理が楽になるように、働いているあいだに積み立てた口座を1つにまとめたいと思う人もいるでしょう。複数の口座で投資をしている人はめずらしくありませんので、リタイアはそれらを整理して統合するいい機会と捉えましょう。早いうちにやっておけばあとあと楽になります。

クリスティン:プロの助けを借りるのもいいとおっしゃいましたが、専門家に見てほしいけれどコストはかけたくないという人はどうすればいいのでしょう?

マリアいよいよ退職となったら、資産管理についてセカンド・オピニオンをもらうのがよいと思います。

プロに見てもらうといってもいろいろなやり方があります。継続的に資産管理を助けてもらうサービスもあれば、1回のみのサービスもあります。金融商品の販売をせず、手数料をとってアドバイスのみを行うファイナンシャル・プランナーもいます。当然ながらいずれもコストはかかりますが、将来的に資産が増えたり節税できたりすればかかったコストを相殺できるかもしれません。

リタイア計画を確認して、本人が気づいていない問題点を指摘したり、所得税や相続税が将来のさまざまな決断に与える影響を教えてくれたりするでしょう。家族や友人にお金をあげたい場合や慈善活動に寄付したい場合も、もっとも効果的な方法を教えてくれます。プロの力を借りることで自信を持って計画を進められるはずです。

リタイアの〝やり直し〟はできないことを肝に銘じてください。今日、くだした決断のせいで、あとで泣きを見るかもしれません。たとえば税金が高くなったり、受給開始時期を誤ったせいで社会保障年金が減額されたりするのです。その段階になると失敗を補う経済的手段も少なくなっているはずです。

クリスティン:リタイア後の医療に関連して長期介護も心配する人が多いです。長期介護費をどのように扱うべきか教えていただけますか?

マリア:難しい問題ですね。というのも、どの程度の介護が必要になるかが人によってぜんぜんちがうからです。いえることがあるとすればバランスが大事ということ。長期介護が必要になる可能性は高くありませんが、実際に必要になった場合の経済的な影響はかなりのものになるでしょう。

ファイナンシャル・プランナーに相談すれば長期介護がリタイア後の資産計画にどのくらい影響するかをシミュレーションしてくれると思います。研究によると長期介護期間は平均して数年ですが、経済的にも精神的にも大きな打撃になります。事前に備えておくのが賢明です。