リタイア後の人生をどう生きるか。これはアメリカでも日本でも共通した課題です。本稿では、『How to Retire お金を使いきる、リタイア生活のすすめ』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集し、投資調査会社モーニングスターの資産管理およびリタイア計画担当ディレクターであるクリスティン・ベンツとバンガード社の資産計画研究責任者マリア・ブルーノの対談から、そのヒントをご紹介します。
リタイアの「やり直し」はできない…あとで“泣き”を見ないために今から考えるべき「老後のコスト」
自分を律すること(何もしないのはだめ)
クリスティン:自分でコントロールできる最後の項目は自律ということですが、9時5時の生活からやっと抜けだせたのに、リタイアしても自律が大事なんですか?
マリア:自律なんて聞くとわずらわしいと思うかもしれません。でも自分を律することはとても大事です。資産計画と投資ポートフォリオが完成しても、計画どおりに実行できなければ意味がありません。投資は感情と密接に絡んでいて、衝動的な決断を招きやすいです。株価の下落でパニックに陥って株を売ってしまったという話を聞いたことがあるでしょう?コントロールしなければならないのは自分自身の感情と衝動的な行動です。経済的成功には、長期的な視点を持ち、コースを逸脱しないことが大事なのです。
コースを逸脱しないといっても計画を変えてはいけないというわけではありません。計画は一度決めたらそれで終わりではないのです。数年ごとに見直して、目標がぶれていないか確認しましょう。ポートフォリオや予算、自身の健康状態などに応じて計画を調整しなければならないかもしれません。人生にはいろいろなことが起こりますし、変わらないものはありません。
クリスティン:リタイアした人に対してほかに助言はありますか?
マリア:リタイア後の人生設計はひとりひとりちがうことを忘れないでください。それはとても個人的なもので、どう生きるかはあなた次第です。周りの人の真似をすることはありません。自分が幸せで充実していれば、それがいちばんなのです。どうかあなたらしいリタイア生活を楽しんでください。
やむなく早期退職された方は環境の変化に適応できず最初は苦労するでしょう。落ち込むでしょうし、厳しい決断を迫られることもあるでしょう。でも自分の意思で退職した場合もリタイア生活はわからないことだらけです。先の予測が難しいのは現役時代となんら変わりません。
私もこの仕事を始めたばかりのころ、こんなふうにインタビューを受ける自分の姿をまったく想像していませんでした。今だってすべての答えを知っているわけではありませんが、みなさんと一緒に悩み、考えていきたいです。
リタイアは旅のようなもの。よき友でありメンターでもある方が、現役を退くタイミングを計る3つの問いを教えてくれました。〝充分働きましたか? 充分な蓄えができましたか? 充分に計画しましたか?〟というものです。これらの問いに〝イエス、イエス、イエス〟といえたなら、あなたもリタイアのときを迎えたということです。
クリスティン・ベンツ
ディレクター、コラムニスト
岡本 由香子
翻訳者