エスカレートする妻の“悪癖”…夫が強く指摘できないワケ

先述のように、住宅ローンの残り1,000万円を一括返済したため、預金残高は5,000万円に。住宅ローンがなくなれば毎月の支出は減るはずでしたが、そううまくはいきません。暇ができたことで、花江さんはネットショッピング三昧の毎日を送るようになりました。

「クリックひとつでなんでも配達してくれるのよ。しかも翌日に届くの。便利な世の中よね」

日用品からデパ地下のお取り寄せグルメまで、さまざまなものをネットで購入できることが、楽しくてしかたありません。その結果、月によってはカード支払いが20万円を超える月もあります。

そんな花江さんを苦々しく思いながら、雄一郎さんは強く注意することができません。なぜなら、実は雄一郎さんにも、花江さんに話していない「秘密」があったからです。

雄一郎さんが定年後にハマった“とある趣味”

退職を目前に控えたある日、雄一郎さんは飲み会の席でこんな話を耳にしました。

「金利が上がってきているとはいえ、物価の上昇にはとても追いついていない。給与だって若い人は上がっているけど、我々中高年は雀の涙だろ。これからは投資でお金を増やして老後に備えていかないと……」

それまで、投資とは無縁だった雄一郎さん。仲のよかった元同僚からの言葉に、「なるほどな」と妙に納得してしまいました。詳しく話を聞いてみると、毎月一定の分配金が出る投資信託があるといいます。

雄一郎さんは投資信託がどのようなものかもよくわかっていませんでしたが、「年金受給が始まるまでの5年間、毎月配当収入があるなら助かるな」と考え、妻に相談しないままその投資信託を1,000万円分購入していたのでした。

「毎月分配金が出る」投資信託の“カラクリ”

それからほどなくして、雄一郎さんはあることに気がつきました。たしかに毎月分配金を受け取ってはいるものの、投資元本が900万円を切り、目減りしているのです。

あとから知ったことですが、実は毎月の分配金の一部は元本を取り崩したものだったそう。購入の際に説明を受けていたものの、雄一郎さんはよく理解できていませんでした。

そして間の悪いことに、先月1人暮らしをしている雄一郎さんの実母が自宅で転倒。大腿骨を骨折してしまいました。手術は成功したものの、1人暮らしの目途が立っておらず、現在も入院中です。母に蓄えはないため、入院費は雄一郎さんが負担しています。この先、施設に入居させるとなると数百万円~数千万円の出費は覚悟しなければならない状況です。

潤沢だったはずの資産は手のひらからこぼれ落ちる砂のようにみるみる減っていき、退職から2年が過ぎたころには、気づけば口座には3,000万円しか入っていませんでした。