A夫婦に忍び寄る「家計破産」の足音

相談を受けた筆者は、A夫婦から現在の家計収支を聞き試算してみました。その結果、月あたり約26万円の年金収入に対して、毎月の平均支出額は24万円台と、年間10万円は貯蓄を増やしていけそうです。

この先、介護や看護、自宅の修繕などの費用が必要となっても、夫婦だけであれば問題なく暮らしていけるでしょう。

しかしCさん家族への援助を続けるとなると話は別です。A夫婦にはそんな金銭的余裕はありません。このままCさんに言われるがままお金を使えば、大げさではなくA家の家計破産が現実的となるでしょう。

「じゃあどうすればCは満足するんですか!?」

Aさんはやや感情的に聞き返します。筆者は今後も援助が必要なら「ご自身の家計収入を増やすか、月々の支出をさらに減らすのが定石です」と続けます。

「これ以上自分たちの生活費を減らさなきゃいけないの……?」

夫婦は顔を見合わせます。

さらに筆者が「息子さんは35歳とものの分別がつく年齢です。親の家計の状況を率直に話すのも一案でしょう」と話すと、夫婦ともに「それは……」と話は続かず、その日は問題解決までに至りませんでした。

A家の「その後」

その後、夫婦で息子家族への援助について話し合った結果、家計の実情をCさんにありのまま話すことに。

話を聞いたCさんは考え込み、やがて「ごめん、そんなことになっているとは知らなかった」とぽつりつぶやきました。

ただ、孫たちも楽しみにしていたことから関西旅行には予定通り行ったそうです。費用はAさんが貯蓄から捻出しましたが、後日Cさんがその費用をAさんに渡してくれたそうです。Aさんは「そんなに肩肘を張るな、親として威厳が保てなくなる」と笑い、Cさんも笑って受け流したそうです。

親子間の問題は、腹を割って話し合うことが解決への近道であり、解決してみれば「単純な問題だった」と笑えることもあるでしょう。しかし、実際には思い込みやすれ違い、親としてのプライドなどが邪魔をして、親子関係に深刻な亀裂を生むこともあります。そうならないためにも、見栄やプライド、「相手は分かってくれるだろう」という思い込みは禁物です。

牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員