リタイア後の人生をどう生きるか。これはアメリカでも日本でも共通した課題です。本稿では、『How to Retire お金を使いきる、リタイア生活のすすめ』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集し、投資調査会社モーニングスターの資産管理およびリタイア計画担当ディレクターであるクリスティン・ベンツと大学教授マイケル・フィンケの対談から、そのヒントをご紹介します。
お金があるだけでは幸せになれない…「悲しげで老いて見えるシニア」にならないために投資すべきものとは
コミュニケーション能力が若さを保つ秘訣
クリスティン:あなたのおっしゃることをまさに実践しているご夫婦を知っています。彼らは70代になったとき、ふつうの人よりかなり早く、高齢者向け住宅に引っ越しをしました。子どもに迷惑はかけたくないとおっしゃっていました。私が出会ったのはこのご夫婦が90代になってからなんですが、おふたりとも実年齢より20歳は若く見えました。
マイケル:おそらくそのご夫婦は社会的に孤立しなかったから若さを保てたのでしょう。他者とコミュニケーションをとるためには高い認知機能が必要です。脳のいろいろな部分が刺激される。会話をしながら記憶の引き出しを開けたり閉めたりしないといけませんし、相手の反応から会話の行き先をつかまえないといけません。そうした能力は筋肉と同じで、使わないでいればやがて衰えます。
80代半ばであっても精神的にも肉体的にも活動的な人は、そのご夫婦と同じで70代前半くらいに見えます。ところが同じ80代半ばでも、リタイア後はテレビを見るかビンゴ大会へ行くかという程度で、人づきあいもしなければ運動もしない人は、もっとずっと老けて見える。同い年なのに20歳も年齢差があるように見えるんです。一方は朗らかで、もう一方は悲しげだ。手本とするのはもちろん朗らかなほうです。
しかしそうなるためには自分の敵を知らないといけない。敵は時間です。そもそも人間は、これほど長生きする想定ではありませんでした。自然のサイクルを考えると、子孫繁栄ができる年齢まで生きれば充分なのです。それでも妊娠可能期を超えた人がたくさんいる集団ほど、年長者の経験や知恵がシェアされて若者の成功体験が増えることも証明されています。よって長生きは人類の進化に貢献しているのです。
永遠に生きつづけられる人はいません。しかし老いに負けず、リタイア後も人生を楽しめるかどうかは、今日のあなたにかかっています。
クリスティン・ベンツ
ディレクター、コラムニスト
岡本 由香子
翻訳者