年金に上乗せされる「国の給付金」

「なんですか? これ」

てるみさんが尋ねると、担当者は次のように説明しました。

「年金生活者支援給付金」とは、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受給中の人がそれぞれ一定の要件を満たすと、年金に上乗せして支給される給付金のことです。

てるみさんは、下記3つの要件に該当しています。

1.65歳以上の老齢基礎年金受給者である

2.同一世帯の全員が市町村民税非課税である

3.前年の公的年金等の収入金額とその他の所得の合計額が88万9,300円以下(昭和31年4月2日以後生まれ)、または88万7,700円以下(昭和31年4月1日以前生まれ)である

なお、収入金額に遺族年金や障害年金など非課税収入は含まれないため、てるみさんは翌年以降もこの支援金の支給対象になるそうです。

金額は物価の変動に応じて毎年見直され、令和7年度の年金生活者支援給付金の基準額は月額5,450円。物価上昇にともない、昨年度から2.7%引き上げられています。

ただし、実際の支給金額は下記のように、保険料の納付済月数によって異なります。

(1)5,450円×保険料納付済月数÷480月

(2)1万1,551円×保険料免除月数÷480月

(1)+(2)=年金生活者支援給付金

満額受け取ることができれば、年間6万5,000円が年金に上乗せされることになります。

「なにこれ、知らなかった……」

そうつぶやくてるみさんに、担当者はきょとんとした様子で言いました。

「支給対象者には申請書が封筒で届いているはずですが、これまでご覧になったことはありませんか?」

「そうだったの!? よく確認せずに捨てていたのかも……。さっきは本当にごめんなさいね。これで少しでも暮らしが楽になると思うと、希望が持てるわ」

申請しないともらえない特別な給付金

年金生活者支援給付金申請書は一度提出すれば、条件が変わらない限り2年目以降は原則手続き不要となります。しかし、一度申請を行わないと給付金をもらうことはできません。

このように、国からの給付金は、自ら申請をしないともらえないしくみのものが多く存在します。対象となる方は申請を忘れないようにしましょう。

また、こうした制度は新設されたり、条件の変更があったりするため、すべてを把握するのは専門家でも簡単ではありません。一般の方にとってはなおさらです。

困ったときにどんな制度を使えるのかわからない、自分が給付金の対象なのか判断が難しいという場合は、役所や年金事務所、または地域包括支援センターなど、まずは身近な公的窓口に相談してみましょう。

山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表