生計維持者が亡くなった場合、一定の要件を満たすと「遺族年金」の受給対象となります。ただ、その金額について「こんなに少ないのか」と驚く人も少なくありません。そこで知っておきたいのが、条件次第で年金に上乗せされる「給付金」の存在です。夫を亡くした69歳女性の事例をもとに、申請しなければもらえない“特別な給付金”についてみていきましょう。ファイナンシャルプランナーの山﨑裕佳子氏が解説します。
まさかの遺族年金額に絶句…年金事務所の窓口で立ち尽くす〈家賃3万円〉〈貯金70万円〉の69歳女性、職員から“1枚のチラシ”を差し出され謝罪したワケ【CFPの助言】
年金に上乗せされる「国の給付金」
「なんですか? これ」
てるみさんが尋ねると、担当者は次のように説明しました。
「年金生活者支援給付金」とは、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受給中の人がそれぞれ一定の要件を満たすと、年金に上乗せして支給される給付金のことです。
てるみさんは、下記3つの要件に該当しています。
1.65歳以上の老齢基礎年金受給者である
2.同一世帯の全員が市町村民税非課税である
3.前年の公的年金等の収入金額とその他の所得の合計額が88万9,300円以下(昭和31年4月2日以後生まれ)、または88万7,700円以下(昭和31年4月1日以前生まれ)である
なお、収入金額に遺族年金や障害年金など非課税収入は含まれないため、てるみさんは翌年以降もこの支援金の支給対象になるそうです。
金額は物価の変動に応じて毎年見直され、令和7年度の年金生活者支援給付金の基準額は月額5,450円。物価上昇にともない、昨年度から2.7%引き上げられています。
ただし、実際の支給金額は下記のように、保険料の納付済月数によって異なります。
(1)5,450円×保険料納付済月数÷480月
(2)1万1,551円×保険料免除月数÷480月
(1)+(2)=年金生活者支援給付金
満額受け取ることができれば、年間6万5,000円が年金に上乗せされることになります。
「なにこれ、知らなかった……」
そうつぶやくてるみさんに、担当者はきょとんとした様子で言いました。
「支給対象者には申請書が封筒で届いているはずですが、これまでご覧になったことはありませんか?」
「そうだったの!? よく確認せずに捨てていたのかも……。さっきは本当にごめんなさいね。これで少しでも暮らしが楽になると思うと、希望が持てるわ」
申請しないともらえない特別な給付金
年金生活者支援給付金申請書は一度提出すれば、条件が変わらない限り2年目以降は原則手続き不要となります。しかし、一度申請を行わないと給付金をもらうことはできません。
このように、国からの給付金は、自ら申請をしないともらえないしくみのものが多く存在します。対象となる方は申請を忘れないようにしましょう。
また、こうした制度は新設されたり、条件の変更があったりするため、すべてを把握するのは専門家でも簡単ではありません。一般の方にとってはなおさらです。
困ったときにどんな制度を使えるのかわからない、自分が給付金の対象なのか判断が難しいという場合は、役所や年金事務所、または地域包括支援センターなど、まずは身近な公的窓口に相談してみましょう。
山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表
