生計維持者が亡くなった場合、一定の要件を満たすと「遺族年金」の受給対象となります。ただ、その金額について「こんなに少ないのか」と驚く人も少なくありません。そこで知っておきたいのが、条件次第で年金に上乗せされる「給付金」の存在です。夫を亡くした69歳女性の事例をもとに、申請しなければもらえない“特別な給付金”についてみていきましょう。ファイナンシャルプランナーの山﨑裕佳子氏が解説します。
まさかの遺族年金額に絶句…年金事務所の窓口で立ち尽くす〈家賃3万円〉〈貯金70万円〉の69歳女性、職員から“1枚のチラシ”を差し出され謝罪したワケ【CFPの助言】
年金事務所の職員から告げられた「衝撃の遺族年金額」
長年連れ添った夫が急逝…先行き不安を抱える69歳妻
ある日、高橋てるみさん(仮名・69歳)は、年金事務所を訪れました。1ヵ月前、同い年の夫・豊さん(仮名・享年69歳)を亡くし、「遺族年金」を申請しようと思ったのです。
若いころの豊さんは仕事が長続きせず、職を転々。てるみさんもパートで家計を助けていましたが、一家の収入は安定せず、暮らしは決して楽ではありませんでした。それでも、ひとり娘をなんとか希望の進路に進ませたいと奮闘。奨学金を借りずに娘を専門学校に入れることが叶いました。
その後も夫婦で力を合わせ、なんとか生活を維持してきた2人。65歳を過ぎてからは、夫婦の年金と夫のアルバイトで生計を立てていました。毎月少しずつ貯金もできており、先月ようやく預金残高が200万円の大台に乗ったところです。
ところがそんな折、45年間連れ添った夫・豊さん(仮名)が急逝。
葬儀費用や墓の購入にまとまった費用が必要になったことから、夫の死から1ヵ月経ったいま、預金残高は70万円にまで目減りしてしまいました。
夫を失った悲しみもさることながら、夫のアルバイト収入がなくなり、貯金も減り、先行きの不安を隠しきれないてるみさん。しかし、藁にもすがる思いで年金事務所の窓口に座ったてるみさんに、担当者は衝撃の事実を突きつけます。
なんと、遺族年金を含めたてるみさんの年金額は、月あたり約8万円だというのです。理由を尋ねたところ、豊さんの厚生年金加入歴が短いことが影響していたようです。
「たったこれだけ……? ねえ、あなたはこれで生きていけるの!?」
思わず担当者に感情をぶつけてしまうほど、てるみさんは追い込まれていました。
夫と住んでいた住まいは、駅から徒歩15分の木造アパートで、家賃は3万円。周辺の相場からすると格安なため、引っ越しは現実的ではありません。
夫婦のこれまでの生活費は、家賃を含めて11万円と平均に比べかなり抑えられており、ここから節約するとしても、切り詰めることができるのは食費くらいしかありません。
娘はすでに結婚して、一子の母となっています。娘に相談すれば助けてくれるでしょう。しかし、「娘のお荷物には絶対になりたくない」と考えたてるみさん。
「とにかく、自分でなんとかしなくては……」
暗い顔で取り留めのないことを考えていると、年金事務所の担当者が1枚のチラシを差し出しました。