「遺族年金」について、なんとなくは知っているものの、実はその仕組みや平均受給額についてよく知らないという人は少なくありません。年金生活者にとって遺族年金は生活費の基盤となるにもかかわらず、「思ったよりも少ない」と驚くケースも多いようです。夫に先立たれた千絵子さん(仮名・65歳)の事例をもとに、「遺族年金」の“落とし穴”をみていきましょう。山﨑裕佳子FPが解説します。
遺族年金は「亡夫の年金の4分の3」じゃなかったの?…〈年金月19万円〉だった67歳女性、年金事務所で告げられた「まさかの遺族年金額」に絶句【FPの助言】
遺族厚生年金の対象者とは
一方、遺族厚生年金の受給対象は裾野が広く、次の要件を満たした遺族に支払われます。
〈死亡した人の要件〉
1.厚生年金保険加入中に死亡した人
2.厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気や怪我が原因で、初診日から5年以内に死亡した人
3.死亡時に障害厚生年金(1級、2級)を受け取っていた人
4.死亡時に老齢厚生年金を受給していた人
5.死亡時に老齢厚生年金の受給資格があった人
〈遺族厚生年金の受給対象者〉
死亡した人に生計を維持されていた遺族①子のある配偶者→②子→③子のない配偶者→④父母→⑤孫→⑥祖父母の順に優先順位の高い人。
※子や孫……18歳に達した翌3月31日まで(障害等級1級、2級に該当する場合20歳未満)
※子のない30歳未満の妻は、5年間のみ受給可能。
※子のない夫は55歳以上に限る。ただし、受給開始は60歳から(遺族基礎年金が受給できる場合は55歳受給可能)。
※父母または祖父母は55歳以上の場合にのみ受給権が発生。ただし、受給開始は60歳から。
遺族厚生年金の年金額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。勘違いしやすいですが、死亡した人の基礎年金にあたる部分は対象外のため、注意が必要です。
また、遺族が65歳以上で自身の老齢厚生年金を受給中である、もしくは受給権がある人の場合、次の計算式で算出した額を比較し、高いほうの金額が年金額となります。
1.「死亡した配偶者の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3」
2.「死亡した配偶者の老齢厚生年金の報酬比例部分の1/2と自身の老齢厚生年金額の1/2を合算した額」
したがって、千絵子さんの場合も、4分の3とは「夫の年金すべて」ではなく「厚生年金の報酬比例部分のみ」が対象になることから、亡き夫の遺族厚生年金額は7万円、千絵子さん自身の年金と合わせると11万円になるとのことでした。
「一生懸命働いた夫の一生が、たったこれっぽっち?……」
千絵子さんは、意気消沈して帰路につきました。