遺族厚生年金の対象者とは

一方、遺族厚生年金の受給対象は裾野が広く、次の要件を満たした遺族に支払われます。

〈死亡した人の要件〉

1.厚生年金保険加入中に死亡した人

2.厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気や怪我が原因で、初診日から5年以内に死亡した人

3.死亡時に障害厚生年金(1級、2級)を受け取っていた人

4.死亡時に老齢厚生年金を受給していた人

5.死亡時に老齢厚生年金の受給資格があった人

〈遺族厚生年金の受給対象者〉

死亡した人に生計を維持されていた遺族①子のある配偶者→②子→③子のない配偶者→④父母→⑤孫→⑥祖父母の順に優先順位の高い人。

※子や孫……18歳に達した翌3月31日まで(障害等級1級、2級に該当する場合20歳未満)

※子のない30歳未満の妻は、5年間のみ受給可能。

※子のない夫は55歳以上に限る。ただし、受給開始は60歳から(遺族基礎年金が受給できる場合は55歳受給可能)。

※父母または祖父母は55歳以上の場合にのみ受給権が発生。ただし、受給開始は60歳から。

遺族厚生年金の年金額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。勘違いしやすいですが、死亡した人の基礎年金にあたる部分は対象外のため、注意が必要です。

また、遺族が65歳以上で自身の老齢厚生年金を受給中である、もしくは受給権がある人の場合、次の計算式で算出した額を比較し、高いほうの金額が年金額となります。

1.「死亡した配偶者の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3」

2.「死亡した配偶者の老齢厚生年金の報酬比例部分の1/2と自身の老齢厚生年金額の1/2を合算した額」

したがって、千絵子さんの場合も、4分の3とは「夫の年金すべて」ではなく「厚生年金の報酬比例部分のみ」が対象になることから、亡き夫の遺族厚生年金額は7万円、千絵子さん自身の年金と合わせると11万円になるとのことでした。

「一生懸命働いた夫の一生が、たったこれっぽっち?……」

千絵子さんは、意気消沈して帰路につきました。