年金だけで暮らすことが難しい現代の日本では、定年退職後も「再雇用」で働く人が増えています。再雇用の場合、現役時代に比べ給料が減少してしまうケースが一般的ですが、これを補てんする「国の給付金」があると、FPの石川亜希子氏はいいます。62歳男性の事例をもとに、「高年齢雇用継続給付金」のしくみと申請時の注意点について、今年度からの改正点とあわせてみていきましょう。
えっ、なんですかそれ?…年収400万円の62歳・再雇用サラリーマン、申請するだけで毎月数万円もらえる「特別な給付金」知らず大ショック【FPの助言】
早速申請した斉藤さん…改定前の“満額給付”が叶ったワケ
時効は2年…途中で気づいた場合“遡って”申請が可能
制度のしくみを知り、高年齢雇用継続給付金について理解が深まった斉藤さん。ただ、毎月2万円以上受け取れたはずの給付金の存在を知らずに過ごしてきたことに、ショックを受けている様子です。
「定年のとき、会社からそんなこと教えてもらわなかったよなあ」と首をかしげますが、会社の担当者が知らない場合もあります。
また、会社から同制度の申請について案内される場合もあります。ただ現在は、60歳到達時の賃金月額証明書の提出義務が廃止されているため、原則として被保険者が高年齢雇用継続給付の希望を事業主に申し出なければなりません。
では、斉藤さんのように途中で制度に気づいた場合はどうなるのでしょう。
高年齢雇用継続給付金は申請期限内に申請することが原則ですが、期限を過ぎてしまった場合でも「時効」を過ぎていなければ遡って申請できます。なお、同制度は雇用保険の給付金のため、時効は2年間です。
斉藤さんは再雇用となって丸2年経っていないことから、再雇用開始時点まで遡って申請できます。
改正後の支給率が適用となるのは「今年の4月以降60歳になった人」
また、このたび改正となった支給率が適用されるのは、「令和7年4月1日以降に60歳に達した日を迎えた人」が対象です。そのため、現在62歳の斉藤さんは、改正“前”の支給率にて支給額が計算されることになります。
いても立ってもいられず、ハローワークで相談を行った斉藤さんは、自身が改正前の支給率で満額給付が受けられると知り、ひと安心です。早速手続きを行い、無事給付がスタートしました。
給付金は“知っている人だけが得をする”制度…情報収集が必須
高年齢雇用継続給付金のように、シニアが対象の補助金・給付金制度は他にもいくつか存在します。しかし、情報は自分で取りにいく時代。すべてにおいて知っている人だけが得をする状況です。
また、今回の支給率改正のように、時代や働き方に合わせて少しずつ内容が変わるケースも少なくありません。どのような選択肢があるのか、最新の制度を確認するようにしましょう。
いまの自分に使える支援や制度を定期的にチェックしておくことが、安心して働き続けるための小さな備えになるのです。
石川 亜希子
AFP
