「高年齢雇用継続給付金制度」実際のところ、いくらもらえる?

国税庁の「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、年齢階層別の平均給与は下記のとおりです。

出所:国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査」
[図表1]年齢階層別の平均給与 出所:国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査」

男性の場合、60歳以降の平均給与は、59歳までの給与と比べ2割ほど減少していることがわかります。このように、再雇用後の給与水準は、現役時代に比べ減少するケースが多いです。

なかでも、斉藤さんの場合再雇用で給与が約650万円から約400万円と4割ほど減っていることから、平均値と比べても減額の度合いが大きいといえます。

こうしたなか、60歳以降も働く人を支援するのが「高年齢雇用継続給付金」です。

高年齢雇用継続給付金は、60歳以降に減ってしまった給与の一部を補てんする制度で、主な支給要件は下記となります。

・雇用保険の被保険者期間が5年以上あること

・60歳以上65歳未満で引き続き雇用保険の一般被保険者であること

・60歳以降の賃金が60歳到達時(60歳の誕生日の前日)の賃金と比べて75%未満となっていること

なお、再雇用だけでなく、継続雇用や再就職、パートやアルバイトであっても、雇用保険に加入していれば同制度の支給対象となります。

では、同制度でいったいいくら補てんしてもらえるのでしょうか?

令和7年度から支給率減少…シニア層に立ちはだかる“厳しい現実”

実は、令和7(2025)年4月1日に高年齢雇用継続給付金制度が改正され「支給率」が変更となりました。

出所:厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」
[図表2]高年齢雇用継続給付金制度における「支給率」※令和7年4月1日以降 出所:厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」

図中の()内は、令和7年3月31日以前の支給率です。これをみると、改正後は支給率が減少していることがわかります。

斉藤さんの場合、60歳到達時の賃金月額の登録上限額である49万4,700円をもとに計算すると、低下率は約67.4%となります。低下率が約67.4%の場合、支給率早見表(※2)より、高年齢雇用継続給付金として給与に上乗せされる支給額は、約2万1,000円となります。3月31日以前であれば約2万4,000円でしたから、約3,000円の減少です。

支給率減少は同制度「廃止」へのカウントダウン

今回の改正で支給率が下がった理由の1つに、高年齢者雇用安定法による、企業の「65歳までの雇用確保措置」義務付けのための経過措置期間が終了したことが挙げられます。これにより、令和7年4月1日以降、企業は希望者全員に65歳まで雇用機会を確保しなければならなくなりました。

60歳以降の雇用が拡大されるにつれ、この高年齢者雇用安定法の制度は今後も段階的に引き下げられていき、最終的には廃止となる予定です。