50年近い投資歴があり、高齢になっても堅実に資産管理できていたのに、突然投資スタイルが変わり、損失が膨らんでしまった……。そんな、誰にも起きうる恐ろしいリスクが存在します。この記事では、魚住蓮太郎さん(仮名・82歳)の事例と共に「家族ぐるみで考える資産管理方法」について、FPの青山創星氏が詳しくお伝えします。
父さん、どうしちゃったんだよ…投資歴47年・82歳の“超ベテラン個人投資家”が謎の豹変、資産3億円→9,000万円の大損失。ありえない行動の裏にあった「悲しい事実」
今すぐ始めましょう―家族の資産を守る6つの具体的行動
この困難な状況に直面した圭一さんたち家族は、友人から紹介されたファイナンシャルプランナーの永瀬財也さん(仮名)に相談することにしました。永瀬さんは、すぐに実行できる具体的なアドバイスを提供してくれました。
■明日からできる3つの無料対策
1.「月1回の家族投資会議」を始めましょう
永瀬さんが最初に提案したのは、月1回30分だけの家族投資会議でした。「お父さん、最近どんな投資をお考えですか?」と気軽に聞くだけでよいのです。重要なのは、投資行動の変化を早期発見することです。
※認知症が軽度の場合や、まだ認知症になっていない家族向けの対策です。
2.「見守りサービス」に今すぐ申し込みましょう
多くの金融機関が無料で提供している見守りサービスは、口座に普段と異なる大きな出金があった場合に、あらかじめ登録しておいた家族に通知が届きます。
※認知症が軽度の場合や、まだ認知症になっていない家族向けの対策です。
3.「地域包括支援センター」に相談しましょう
全国の市区町村に設置されている高齢者の総合相談窓口で、認知症に関する相談や成年後見制度の利用支援などを無料で行っています。「将来に備えて話を聞きたい」と気軽に電話してみましょう。
■より確実な3つの有料対策
1.「家族信託」で柔軟な財産管理を
本人(委託者)が信頼できる家族(受託者)に財産管理を任せる契約です。専門家に依頼すると50~100万円程度の費用がかかりますが、認知症になる前に自分の意思で財産管理の方法を決められます。
※蓮太郎さんの事例では該当しません。本人に判断能力があるうちに契約する必要があるためです。
2.「任意後見制度」で安心の法的保護を
本人が判断能力があるうちに、将来認知症になった場合の後見人を公正証書で指定しておく制度です。公証人手数料など数万円程度の費用で、自分の意思で信頼できる人を後見人に選べます。任意後見監督人や任意後見人への報酬は、月額数万円です。
※蓮太郎さんの事例では該当しません。本人に判断能力があるうちに手続きする必要があるためです。
3.「成年(法定)後見制度」で法的な財産保護を
判断能力が著しく低下した方のために家庭裁判所が後見人を選任する制度で、本人の財産を法的に守ることができます。申立費用は数万円程度で、家庭裁判所に申し立てることで利用できます。成年後見人への報酬は月額数万円程度です。
※蓮太郎さんの事例のように、すでに認知症を発症されている場合に最も適した制度です。
認知症に備えた投資ポートフォリオの見直し
永瀬さんは資産運用面でのアドバイスも提供しました。
「年齢を重ねるにつれて、投資ポートフォリオはシンプルにすることをお勧めします。複雑な投資商品や個別株よりも、インデックスファンドやETFなどの分かりやすい商品に集約することで、管理が容易になります」
また、「投資信託の積立設定」も有効です。これにより、認知症になって自分で投資判断ができなくなっても、あらかじめ設定した通りに資産形成が続けられます。