中田家の「その後」

義父との同居生活が続くなかで、ストレスが限界に近づいていた俊夫さん。ある日、意を決した俊夫さんは、これまで抱えてきた不満や心のうちを改めて陽子さんに打ち明けることにしました。

努めて冷静に、不満に感じることとその改善策を述べる俊夫さん。静かに語る夫の様子に、陽子さんはハッとしました。父のことばかり気にかけ、夫がここまで我慢を重ねていたことに気づいていなかったのです。

「そんなに辛かったなんて……ごめんなさい」

陽子さんは素直に謝り、その日2人は今後の暮らしについて建設的に話し合いました。

「ルール作り」がストレスを減らす

親との同居にあたりトラブルを避けるためには、事前対策が欠かせません。なかでも重要なのが「家庭内でのルール決め」です。

たとえば次のようなルールを決めておくと、同居によるトラブルを避けやすくなるでしょう。

  • 金銭面の負担割合や支出に関するルール
  • リビングや浴室など、共有スペースの使用時間や優先順位に関するルール
  • 食事の準備・片づけなど、家事分担に関するルール
  • 生活音への配慮など、日常生活における注意事項

義父を交えた話し合いの結果

中田夫婦は、義父も交えて3人で話し合う場を設けました。義父もまた、リビングに長居していることで気を遣わせていると感じていたようです。誤解やコミュニケーション不足が解消され、話し合いは穏やかに進みました。

そして中田家は、家全体の暮らしやすさを見直すことにしました。義父にはすでに個室がありましたが、これを機に義父の部屋のリフォームを行いより快適な空間に。さらに、小さいながらテレビを設置することで、義父が自室で過ごす時間も自然と増えていきました。

義父のリビング占有時間が減ったことで、俊夫さんも自分の居場所を感じられるようになり、精神的な負担も少しずつ和らいでいきました。

また、金銭面のルールづくりも行い、光熱費などの生活費は夫婦で按分したうえで、義父の年金からも一部負担してもらう形で合意しました。

精神面だけでなく、経済的なモヤモヤもクリアになったことで、中田さんの表情にも少しずつ穏やかさが戻っていきます。

「いつまでいるんだろう」

そんな言葉がふと浮かぶことも、いまではほとんどなくなりました。それは、きちんと話し合い、お互いを理解し合えたからこそ得られた変化です。

辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表