老後に待ち受けるさまざまなライフイベント。そこには「お金では解決できない問題」もあるようです。定年前の段階で3,000万円を蓄える中田俊夫さん(仮名・59歳)は「定年後が不安です」とポツリ。その理由は、約1年前から始まった義父との同居生活でした……。中田さんの事例をもとに、老後の親との同居生活におけるリスクとその対策をみていきましょう。辻本剛士CFPが解説します。
いつまでいるんだろう…〈年収950万円〉〈貯金3,000万円〉寝室で舌打ちする59歳サラリーマン、原因は「笑顔でリビングに居座る84歳・義父」の存在【CFPの助言】
思わず口からこぼれた「いつまでいるんだろう…」
義父は日中、そのほとんどをリビングで過ごします。穏やかな表情でテレビを見ている姿は一見平和ですが、俊夫さんにはその空間が徐々に「自分の居場所ではない」と感じられるようになっていきました。
食事や休憩、妻との談笑を行っていたリビングに、義父がずっといるというのは、俊夫さんにとっては「プライバシーの欠如」と感じられるものです。また、高齢の義父はテレビの音量が大きく、耳障りに感じることもしばしば。
さらに、夜型の俊夫さんに対し、義父は早寝早起きが習慣づいているため、俊夫さんがようやく寝ついたころ義父が起き出し、大音量でテレビをつけます。
(いつまでいるんだろう……)
俊夫さんは寝室で舌打ちしながら思わずそうつぶやきました。
しかし、妻の陽子さんに遠回しに伝えても「わかるけど、もうお父さんもいい歳でしょ。大切にしてあげたいの」と主張し、義父との同居を見直す気配はありません。
義父には年金もあり、同居によって家計が圧迫されることはないものの、中田さんが求めていた「定年後の静かな時間」や「自分だけの空間」は、少しずつ遠のいていきました。
「定年後もずっといるってことだよな……俺の居場所って、どこにあるんだろう」
俊夫さんが抱える不安とストレスは、徐々に限界値へ近づいていきました。
高齢世帯の4組に1組が「親と同居」
俊夫さんの悩みは、プライバシーが確保できない点にあります。
現状のままではリビングが義父の居場所となり、自宅にいても落ち着くことができません。ストレスが積み重なり、精神面への影響も気になるところです。
高齢夫婦とその親の同居に関する日本の現状
60代の夫婦が高齢の親と同居しているケースは、珍しいものではありません。少し古いデータになりますが、国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、65歳以上の高齢夫婦のうち、親と同居している割合は23.4%となっています。つまり、高齢夫婦の約4組に1組が、さらに年上の親と同居しているということです。
「人生100年時代」といわれる現代、今後もこうしたケースが増加する可能性があります。そのため、将来を見据えたライフプランには「親との同居」を想定しておくことが重要です。
